小さな夢

□ダブルデート<待ち合わせ編>
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「比奈先輩!」

「ん?」

「ダブルデートしましょう!!」

「ん―……ん!?」


問い返そうとスコアボードから顔を上げるが、すでに相手は日向のもとへ報告しに行っている。「デート」と聞こえることから聞き間違えではない。

「う…嘘でしょ…?」

半ば呆然とした様子で比奈は肩を落とした。










『…デート?』

さっそく電話でダブルということを隠しデートに誘った比奈。赤司の妙に嬉しそうな声に胃がキリキリと痛む。

「う、うん!最近デートどころか会ってもいなかったからどうかなあ?って…あ、でもこっちに戻ってこれないんだったらいいんだよ?!無理しなくていいから!」

『何言ってるの?比奈。もちろん比奈の誘いを断るわけないだろう』

嬉しいのやら怖いのやら。電話を切った後無機質な音が耳に響く中比奈は「ダブルデートだけど」とつぶやいた。少しでも罪悪感から逃れるためだった。

誠凛三人の中に一人他校が混ざることや難しい性格の赤司が混ざるということに赤司に対しても日向たちに対しても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。







「あ!比奈せんぱーい!」

ニコニコとかわいらしい笑顔を浮かべる木吉比奈。比奈は振り返った。

「比奈ちゃん。おはよう」

「おはようございます!」

笑顔を絶やさない比奈につられ比奈も笑みを浮かべた。そんな彼女たちに近づこうとする男たちは少なくない。

「君たちかわいいねー」

軽薄そうな男たちが二人に近づく。比奈は先輩の大切な妹を守るため、前に出た。睨みあげる比奈をにやにやと笑い見る男たち。

その男たちの手が比奈に伸びる寸前、声が聞こえた。

「何やってんだ?てめーら…」
「僕の比奈に何か用かい?」

日向と赤司だ。
二人の比奈はそれぞれの待ち合わせ相手が来たことで、安堵のため息を吐いた。






「比奈…とりあえず―――説明してくれるよね?」

にっこりと笑う赤司。比奈は冷や汗をかいた。「え、えっとー…」と口ごもる比奈。すると日向の後ろに隠れていた比奈が飛び出した。

「今日はダブルデートする約束だったんです!」

「ダブルデート…?」

ちらりと比奈から比奈へ視線を移した赤司は苦笑いを浮かべる比奈を見てため息を吐いた。

「ま、今日はよろしくな赤司」

「…はい」

日向のことは知っていたのか、赤司は渋々頷いた。その様子に、比奈はそっとため息を吐いた。

兄譲りの天然な気質を持つ比奈はニコニコと満面の笑みを浮かべていた。



(キャー!比奈先輩!これおいしいですよ!)
(こっちもおいしいよ!あーん!)
(あーん!)

(おいおい…)
(これどっちがカップル…?)





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