長編

□自己チュー×バスケ=?
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自己チュー×バスケ=?

















屋上の扉を開けると彼女がいた

「なんでいるんだよ…」

「ツレナイな、ガングロ君」

先輩は少し目を細めて微笑んだ
微かに吹いている風が彼女の髪を揺らす

「それより私に言う事が有るんじゃないのかい?」

「アンタに言う事なんかねぇよ」

「うわっ、冷たいね君は。
年上にはもっと敬意を持って接するべきだよ」

はぁ、と溜息をついた

「おはよう、ガングロ君」

先程のような微笑ではなく、満面の笑みで先輩が言った
突然の挨拶に青峰は驚いた

「人に会ったらまずは挨拶をしなければ」

ね、と首を傾げて同意を求める
その仕草を思わず、可愛い、なんて思ってしまう

「どうしたんだい、ガングロ君。顔が真っ赤だよ?」

柵に寄りかかっていた先輩が青峰の前までやってきて頬に触れた

「っなんでもねぇよ!!」

その手を振り払うように青峰は顔をそむけた

「てかアンタはなんでまたココにいんだよ。もう授業始まんぞ」

その言葉に重なるように授業の始まりを告げるチャイムが鳴った
先輩は、ニヤリ、と笑い腰に手を当てて胸を張って言った

「我々はまだ学生だっ」

「…いや、分かってるよ、んな事は!!」

返された言葉はあまりにも突拍子もなく、あまりにも普通すぎる言葉
しかも彼女が屋上にいる理由になるはずもない
思わず大声で突っ込んでしまう
それでも先輩は勝ち誇ったように笑いながら続けた

「学生であるが故に起きている内のほとんどの時間をこの学校という強いられた空間で過ごさなければならない。
それなのに勉強までしなければならないなんてバカバカしいと思わないかい?」

「…要するにアンタもサボりじゃねぇか」

「その表現は正しくないな。私の場合は息抜きと言うのだよ」

ふふん、と鼻高々に言った
そんなの一緒じゃねぇか、と思ったが言わずにおいた

「というか、君は私の事を『先輩』と呼ばないな。
なに、君と私の仲だ。遠慮せずに呼んでかまわないぞ」

さあ!と両腕を左右に広げて言う
一つ一つの動作が演技臭いのはこの先輩の癖なのか、はたまたわざとなのか見当もつかない

「ぜってー呼ばねー」

バカらしい、と言うように小指で耳を掻く

「ケチ」

頬を膨らませ拗ねた子供のような顔をする

「ケチじゃねー」

こんなのに付き合いきれない、と青峰は思った





























「お、見たまえガングロ君」

青峰が自分の腕を枕にして寝転がっていると柵に寄りかかった先輩の声が降ってきた

「あぁ、すげえな、それ。アンタの勝負パンツか?」

「っそっちじゃない!というか見るな!!」

すぐさまスカートを抑えて隠す

「ジョーダンだって。アンタのパンツなんか興味ねぇよ」

「ひどいな!
そこはちょっとでも興味あります、みたいなこと言った方が健全な男の子に見えるぞ!!」

「むしろそれ言った方がやばいだろ。
健全っつーかただのスケベじゃねーか」

「なにを言う、男は皆スケベだろう!!」

「少なくともオレはちげーよ!」

軽く先輩の頭を叩くと彼女は小さく悲鳴をあげた

「で、何を見りゃーいいんだよ」

起き上がって彼女が立っていたところまで移動する
あそこだ、と指をさしたのは体育館だ

「バスケやっているぞ」

「…それだけか?」

「それだけだ」

「…起きたオレがバカだった」

溜息をついて再び元の場所で寝転んだ

「いいなぁ、バスケ。私もやりたいなあ」

「バスケ、出来んのかよ」

あぁ、と短く返された
見上げるとうらやましそうに体育館の方を眺めている

「一番好きなスポーツだからね。
もっとも今は医者に止められているけれど」

「なんで」

くるりと体を反転させて青峰を見る
その顔はどこか悲しそうだった

「今年の春に足を痛めてね。
まぁ、体育の授業くらいなら問題はないらしいけれど、部活出来なくなってしまったよ」

「部活って…バスケ部か?」

「そうだよ。一応スタメンだったんだけどね」

ここは帝光中
バスケ部が強いことで有名だ
それは男子バスケ部に限ったことではなく、女子バスケ部も勿論強い
その中でスタメンだったという事は彼女も相当強いはずだ

「よし!」

ぽん、と膝を叩いて立ち上がる

「オレと1対1しよーぜ!」

「…はい?」

先輩が間の抜けた顔をした
彼女がこんな顔をしたのは後にも先にもこのときだけだった








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