長編

□部活×幼馴染=?
1ページ/3ページ




部活×幼馴染=?



















その日は朝から雨が降っていた
屋上に出ることは出来ないので扉の前の階段に先輩は座っていた
真正面の窓から見える外の景色は灰色の雲と土砂降りの雨だけだった

「止まないねぇ、雨」

ぽつりと先輩が呟いた
壁に寄り掛かりながら座っている青峰が、おぅ、と短く返す

「土砂降りだねぇ」

「あぁ」

「いつになったら止むんだろうね」

「んー」

「…聞いてるのかい?ガングロ君」

「あー、うん。大変だなー」

「聞いてないじゃないか…」

先輩が溜息をつく
青峰の相手をするのに飽きたらしくまた黙って窓の外を眺め始めた

「なー、いい加減名前教えろよ」

青峰が言う

「駄目だ」

バッサリとそれを切って捨てる
青峰を見もせず雨を見ていた

「なんで」

先輩の隣に座り直して聞く

「知ってしまったらつまらないだろう」

「…それだけか?」

「それだけだ」

はぁ、と今度は青峰が溜息をつく
後ろへ体を倒しごろんと寝転んだ

「アンタほんと訳わかんねー。
キスまでしといてまだ教えてくんねぇのかよ」

ぶつぶつと文句をいいながら天井を仰ぐ

「アレは人工呼吸じゃなかったのか?」

やっと彼女は青峰の方を向いた
にやにや笑いながら見ている

「っるせーよ!!」

人の揚げ足取んじゃねーよ、と先輩の背中を叩く
彼女はまだその妙な笑みを浮かべたままだ

「なぁ、ガングロ君」

「んだよ!」

「いっそその先までやってみるか?」

先輩が青峰の上に覆いかぶる
どんどん彼女の顔が近づいてくる

唇が重なる寸前

「…ふざけんなよ」

青峰が彼女の口に手を当ててそれを止めた

「本気じゃねえ奴を抱くようなやつじゃねーよオレは」

眉間にしわを寄せて睨みつける
彼女は眼を見開いて驚いていた

くつくつと喉の奥を鳴らす

「…冗談だよ」

悪戯をした後のような笑みを浮かべた

「私だって、本気でない輩に抱かれるつもりはないさ」

ひょい、と青峰の上からどけて元の場所に座る

「ところでガングロ君」

「なんだよ」

はぁと溜息をつきながら答える

「傘、持ってるかい?」

「は?」

「ちなみに私は持っていない」

「…だから?」

「貸してくれ」

「やだよ!!」

起き上がって怒鳴る
先輩は悪びれた様子も驚いているような表情もしていない

「てかアンタどうやって学校に来たんだよ!?」

朝から雨降ってたぞ、と声を張る

「朝は幼馴染の傘に入れてもらった」

だから持ってない、と続けた

「雨に濡れて帰るのは嫌だ。
だから君のを貸してくれ」

「…部活終わるまで待ってたら入れてやる」

「じゃあ待ってる」

約束だよ、と先輩は微笑んだ














次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ