長編

□雨×自宅=?
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雨×自宅=?










一つの傘に二人で入った
朝からの土砂降りで出来た水溜まりが足元で音をたてる

「なあ」

ばしゃばしゃと水を撥ね上げながら口を開いたのは先輩の方

「征十郎となにを話してたんだ?」

足元を見ながら歩く
二人の頭上の傘をくるくる回しながら聞いた

「…別に何も話してねーよ」

青峰のその回答に、嘘だぁ、と呟く

征十郎とは赤司の名前
名前で呼んでいるあたり、彼と先輩はかなり仲は良いのだろう

少しだけ、気に食わないと思った

先輩はまだ足元の水を蹴り上げながら歩いている

「隠し事はいけないな」

ぐいと青峰の制服の袖を引く

「雨、当たってるぞ」

先輩が指差したのは彼女がいる側とは反対の肩
たしかにそこは濡れていた

「これくらい濡れたうちに入んねーよ」

ぷいと先輩から顔を背ける

「なんで君は怒っているんだ?」

少しだけ首を傾げた

「…怒ってなんかねえよ」

「じゃあ拗ねてる」

「拗ねてねぇ」

「泣いてる?」

「泣いてるよーに見えるか?!」

少しだけ声を張ると先輩がくすくすと笑う
その表情に僅かに息を飲んだ

「やっといつもの君らしい」

目を細めて笑う
それはどこか安心したような顔でもあった

「君はそうしている方がずっといいよ」

そっと傘を持つ手に自分のそれを重ねてくる
ガングロ君、と青峰を呼ぶ

「私の家、そこなんだ」

指差した先には大きくもなく小さくもない一軒家
家族が住むにはちょうど良いかもしれないが先輩が一人で住むには大きすぎる気がした
寄っていくか、と尋ねられた

「雨に当たって寒いだろう?」

重ねられた手が軽く引っ張られる

「ホットミルクくらいなら出してやる」

ふわりと笑った
青峰は先輩に手を引かれるまま彼女の家に入って行った





















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