長編

□プリクラ×携帯=?
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プリクラ×携帯=?












その日の彼女はいつもより積極的だった
いや、いつもも十分積極的だとは思うが、どこかいつもと違うような気がした

「でーとぉ?!」

「デートだ、デート。君は日本語も喋れなくなったのか?」

屋上には青峰の口から洩れた妙な声と、先輩のいつものようなすっきりとした声が響く

「どうせ暇だろう?これから付き合いたまえ」

いつも以上に上から目線で彼女は告げた

「これからって…まだ学校来たばっかですけど!?」

抜けだすのか、と声を張って聞く
もちろん、と彼女は頷いた

「この前だって抜けだしただろう?それに少し抜け出すだけだ」

ちゃんと学校に帰ってくるさ、と続けた

「君には部活だってあるわけだしな。
私のせいで何度もサボらせるわけにはいかんだろう」

ほら、と手を差し出された
それを掴むと彼女は納得したように大きく頷いた
























「で、ここかよ…」

先輩に連れられてきたのはどこにでもあるようなゲームセンターだった
慣れたように彼女は中へ入って行った

デートがしたい、と言い出したのは彼女だ
しかしそれは青峰に拒否権を与えないような命令系の言い方だった

朝一番、顔を合わせた瞬間、付き合え、と

当然、青峰は断ることも出来ず、学校を抜け出した

「こっちだ、ガングロ君」

ゲーム機の影から先輩が手招きする
店内はゲームセンター特有のジャカジャカと色んな音が混ざっている

手招きされた方へ行ってみるとそこはいかにも女子が好きそうな一角だった

「これ撮ろう!」

指差した先には今はやりと思われるプリクラの機械

「はやく、はやくっ!」

まるで遊園地に来た子供のようにはしゃぎながら青峰を呼ぶ

「…マジで撮んのかよ」

はぁ、と呆れたように溜息をつく
中にはいると彼女がすでに硬貨を入れて設定を始めていた

「一回使ってみたかったんだ!」

目を輝かせながら機械をいじる
設定が終わったらしくカメラがあると思われる場所にピースをする

「ガングロ君も!!」

ぐい、と腕を引いて隣に立たせる
青峰がバランスを崩して転びかけたところでシャッター音がした

「あー、なにやってるんだよガングロ君」

「っアンタがいきなり引っ張るからだろうが!!」

そうやって言いあう間もなく次の撮影のカウントダウンが始まった

「ほらピース、ピース!」

再び彼女は笑顔でポーズをとる
カシャリ、と音がした

今度は転ばなかったものの、身長の高い青峰は顔が半分見切れていた

「少ししゃがめ!」

制服をぐん、と下に引っ張られた
なんとかフレームに収まるようになった

さん、にー、と機械のカウントする声が始まった














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