ひまわり

□『夢を見ていました』
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 ふわりと風が吹く。




 かたかたと未だに聞き慣れない馬車を転がす石畳の音が、眠っていた私を無理やりに起こした。




 時は明治。




 長く続いた江戸は幕を閉じ、"侍”は姿を消した。




 窓から見えるのは、昔と変わらぬ黄昏と、変わってしまった町並み。




  そこにはもう風鈴の音も、蛍火も祭り提灯も、氷菓子をほおばる笑顔も無い。





 どうやら私はあなたと過ごしたあの夏の夢を見ていたらしい・・・



 今はもう隣にいないあなたを思い、花瓶へ挿したひまわりを眺める。



 もしかしたら、あなたと過ごしたあの季節自体が夢だったのかもしれない・・・

 最近はそうとさえ思えるくらいに、時はめまぐるしく進み、物は形を変えていく。




 だけど、変わらずにただ花を広げるひまわりを見て、薫る風を感じて目を瞑ると、

 美しく、触れそうなほどに思い出されるのはやっぱり、あの笑顔と優しい時間・・・・




 私は夢を見て、 
  これからも美しく咲き誇るひまわりに思いを馳せる。






  あの、遠き夏の夢へと・・・・






           『夢を見ていました』

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