キス狂さんへ2

□星合い
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「ひとりで抜けがけだなんてズルくない?」



「………」




空っぽだったはずの隣の席
フワッと舞う甘い香りに呼吸を忘れてしまいそうになる

振り向けないまま星を見上げていたら確信に変わる





「ね、ここにくれば絶対に逢えたね?」


「ユチョン…ですか……?ほんとに…ユチョンですか……?」




嘘のようだ…
ずっと逢えずにいたのに…

なのに、僕の隣には貴方がいる

僕の手を握って変わら無い笑顔をくれる貴方がいる……







「ユチョンッ……ぁの…ッ!!」


「チャミナ、外行こう?」


「…はぃ。」





静かな空間を壊してしまう事も厭わないように、今の僕はあり得なかったはずの幸せを目の前にしてぐしゃぐしゃに泣いてしまいそうだった

そんな僕を知ってか知らずか、手を取りここから外へと連れ出してくれた












「チャミナァッ!!ねぇ、見てっ!!」



「ぁ………………」





プラネタリウムで見た溢れんばかりに瞬いていた星々は、今僕たちの真上にあった…






「ようやく晴れたね?」


「ユチョン…ど、して………?」


「ん?」





何があっても僕が貴方の元へ逢いにいくと言ったのに、見えない何かが恐くて僕の足を止めて……

全部言い訳だけどどうしても貴方の元へ行く事が出来なかった…
逢いたいと応えられなかった……


なのに、貴方は…こうして当たり前のように僕を迎えに来てくれた……








「こんなに晴れたんだから
俺にだって織姫を迎えに行くこと出来るでしょ?」


「ごめんなさぃ……手紙…くれたのに………」


「チャミナ……」




ギュッと抱き寄せて耳元に伝ってくる一つ一つの言葉に降り止んだはずの涙は溢れ出してしまった




「俺こそゴメンね…あんな手紙だけ送って、チャミナが来てくれるの期待するだけでさ…待たせてゴメン…」


「ユチョナァ………あぃたかった…」


「やっぱりさ、七夕に降る雨は幸せな
涙なんだよ。きっとチャミナみたいに綺麗な涙なんだろうね?」


「はぃ…絶対に幸せな涙ですね…」


「あとちょっとで七夕終わっちゃうね……」



七夕が終わってしまえば
昨日までの僕らに逆戻り

だけど、それは仕方のないことです。





「…今日が終わっても…また来年の七夕は一緒に過ごしましょうね…?」


「そんなの待ってらんないよ。」


「ン…………」



どれだけぶりかに重なった貴方の唇はアツくて、強請ってしまいそうなほどに気持ちが好くて…



「もうそんな口実使うのやめる。
逢いたい時に逢いにくるから……
もう、淋しいって独りで泣かせたりしないから……」



「ほんと…に……?」



「ほんと」


「毎日……ずっと一緒にいたい…って言ったら…?」



そんなワガママ無理だって事は知っているのに望みを投げ掛けてしまった



「ずっと一緒にいよ?」



「フフ……それは無理でしょ…?」




笑って見つめる僕を切ない瞳が映す






「ユチョン…ありがと………
愛してます……愛してます……」





本当に愛してる

貴方さえいれば僕は何も要らない





今日が終わってしまってもずっと一緒に居たい


でも絶対に無理なのはお互い分かってるから


だけど、もう大丈夫です







「一年後の今日、ここで待ってます」


「一年後かぁ……永いなぁ……」


「あっという間じゃないですか?
あの日から今日までの永い時間に比べたら」


「よく逢わずに我慢できてたよねぇ?」


「もう我慢するなんて無理ですから」


「チャミナ……」


「はい…」





残り少ない時間
言葉よりも視線を交わして、何度も唇を合わせる


明日から逢えない淋しさを埋めれるように何回も何回も……
もう十分なんて思う事はないけれど、時間はやって来る……






「チャミナ…早く逢いたいょ……ッ」


「フフ…泣き虫ユチョン……」


「やっぱり…ずっと一緒にいたいよ…」


「ユチョン………」




僕だって…
僕の方が貴方の傍を離れたくないと思ってるんですよ?

だから、今度こそ……







「今は僕らのあいだを隔てている天の川だって、いつかは橋が架かる時がやって来ます。
もし、架からないなら僕が橋を作ってやります。
そうしたらいつでも一緒に居られるでしょう?だから…もう少しの辛抱です。」


「ンハッ!!橋まで作っちゃうなんて……ほんとに頼もしい織姫だよね、チャミナは……
そだね…もうちょっとの我慢だね…」


「逢えなくても愛してます…今度は僕から手紙を送ります……逢いたいって…愛してると何度も何度も云わせて下さい………」


「俺も送るから…」



「ユチョナ………」





淋しい別れなんかじゃない

幸せを抱えて歩き出せる別れなんて愛し合う僕らにしか無理ですよね?





「また…逢いましょうね…?」


「ぅん………ここでお前が来るのまってるから……」




零れていく幸せの形を互いに拭い合い、笑い合った









七月七日

七夕の夜、
この日は貴方と愛し合うことが赦される日




駆け寄る僕を見つけたら真っ先に抱き締めてくださいね?











そうして
淋しさを消してくれ、
幸せに満ち溢れた今日はあっという間に終わっていった






どうか、空の上の2人もずっと愛しあえていますように………





Fin.
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