Shortstory

□誕生日
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夏休み真っ只中の8月6日。

ハルはいつものように猫の事務所に向かっていた。

ここを左に曲がって次の角を右に曲がれば……。

ハルの眼前に猫の事務所が見えた。

(やっと着いたー!)

ハルは大理石のアーチをくぐり、猫の事務所へ向かった。

一方バロンは朝の優雅な一時を過ごしていた。

今日朝一番に淹れたバロン特製スペシャルブレンドを試しに飲んでみる。

(今まで淹れてきた中で最高の出来だ!
今日はなんて運のいい日なんだろう。
そういえば昨日のハルはやたらと今日を気にしていたが何かあったのだろうか?)

そう思いまた一口啜ると

『よく毎日そんな青臭い物飲めるな。バロン。』

いつの間にかムタが事務所に来ていた。

『ムタ。今日は一番の出来なんだ。そんな事言わずに君も飲むといい。』

『男爵。このデブ猫は猫舌だから飲めやしないよ
。それと私にも君の最高の一杯をくれないか?』

相変わらずムタをからかいにトトがやって来た。

『うるせー靴墨野郎。』

(いつもの喧嘩が始まったか…。まぁハルが来るまでまだ時間があるから仕事を終わらそうかな。)

その時事務所のドアをコンコンと叩く音がした。

(こんな朝早く一体誰だろう?)

ドアを開けようとすると逆に勢いよくドアが開きバロンの視界にハルが飛び込んで来る。

同時に
『ただいまバローン』と明るい声が事務所に響き渡る。

ムタとトトは喧嘩を止め、バロンの方を見る。
(いつものが始まるな。)二人は内心そう思った。

バロンは小さくなるハルをお姫様抱っこでしっかりと受け止める。

ハルはこの瞬間だけいつも慣れずに顔が赤くなる。

『お帰りハル。今日は随分早いんだね。何かあったのかい?』

『うん。今から話すから降ろしてくれる?』
恥ずかしそうにバロンに言った。
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