Shortstory
□誕生日
3ページ/11ページ
ハル達はトンネルを抜けると街が広がっていた。
ここはドール街といってバロンと同じような心を持った物達の街で、EastAvenueでは比較的高価な物を扱っていて、WestAvenueでは生活用品や食材などを扱っているとバロンに説明された。
『紳士服のお店は何処にあるの?』
『分かった。ついて来てハル』
バロンはハルの手を握り案内する。
すれ違う者皆バロン達の方を見る。
『恥ずかしいよ。バロン。』ハルは小声で言うと
『ハルは十分可愛いし綺麗なんだから恥ずかしがる必要なんてないよ。』
バロンはさらりと言う。
そうこうしている内に目的の場所へ着いた。
やはりEastAvenueにあり、イギリス風な建物で見た目からして高そうな雰囲気を醸し出していた。
店内に入るバロン達。すると店員がやって来た。
「いらっしゃいませ。ジッキンゲン男爵。えっと…そちらの方はお連れ様ですね。私どもはお客様を名前で呼ぶ決まりになっておりますのでお名前を伺っても宜しいですか?」
『はい。私の名前はハルです。』
「ハルお嬢様ですね。素敵な名前です。それでは本日はどういったご用件でしょうか?」
(お嬢様とか初めて呼ばれたよ。)
『バロンの誕生日プレゼントを買いに来ました。』
「どんな物をお探しですか?」
ハルはバロンに聞こえないように
『ステッキはありますか?』と言ったけれど流石はバロン。耳がいいので聞こえてしまった。
(ハルは猫の国での一件の事を気にしていたのか……。)
『はい。扱っております。今から案内いたしますがジッキンゲン男爵はどうされますか?』
すかさずハルが『店内で待ってて。それから呼んだら紳士服売り場の方に来てね。』
(ハル。君の上目遣いは俺の自制心を歯止めが効かなくなりそうだよ。こっちは我慢するので精一杯なのにきみは無意識にやってるみたいだから本当に質が悪い。)
『うん。分かった。』
バロンはそれしか言えなかった。
『絶対だよ〜。』
そう言いながら店員と消えていった。