短編

□死なんて言葉じゃ離れない
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彼は私を見て言いました。
「愛してる」と言いました。
私はとても嬉しくなったので、
「私も私も」言いました。

彼は私を見て言いました。
「死んでくれ」と言いました。
私はとても悲しくなったので、
「嫌です嫌です」言いました。

彼はどうして変わったのだろう。
どうして私は変わった彼を受け入れられないのだろう。
どんな彼でも好きと思ってたのに、
私は彼を拒んだ。

「いちろーた君、
髪結んだ方がかっこいいよ。
いちろーた君、
その服カッコ悪いよ。
いちろーた君、
目が怖いよ。
いちろーた君、
君は何もしなくても強いよ。
いちろーた君。いちろーた君。」

手を伸ばしても届かないから何度も彼の名前を呼んだ。

彼を私を見て微笑んで、そして私の所へ来てくれた。

「なまえ」

「いちろーた君」

「なまえ、」

「私…」

「死んでくれ」

「、」

「死んでくれ」

いちろーた君の顔は見えなかった。

そこは暗くて、湿ってて、とにかく暗くて。
怖くて怖くて仕方なくて、どんどんいちろーた君が離れて行く。
あ、そっか。あたし倒れて行くんだ。

ばいばい。今はバイバイいちろーた君。
次起きたら元の君に戻っていてね。





「死んでくれ」

分かってる。嘘でしょ?


だって変わっちゃったいちろーた君は涙を流したりしないもの。



死なんて言葉じゃ離れない


(だから私は愛してると言ってあげた)



11/03/12
 

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