Beast of prey

□第一部
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此処は中国の外れのある村。

「レイ姉!」

「レイ!」

誰も居ない小さな家。

そんな家の戸を凄い勢いで開けた子供が2人。

ピンクの髪の可愛らしい少女。

そして少女と顔のそっくりな少年。

この2人を見ていれば兄妹の関係がよく分かる。

どちらの顔もどこか焦った様な顔。

少女の方は今にも泣きそうだ。


「ライ、マオ…」


誰も居ないと思われた家には1人の子供。

黒い髪に太陽の様な金色の瞳。

明るい笑顔の似合う整った顔立ちは曇り、目は赤く腫れていた。

レイと呼ばれた少女は驚いた様に顔を上げる。

服の裾をきつく握る。

「どうしたんだ?こんな夜遅くに」

「どうしたんだじゃないでしょ!何でアタイ達に言ってくれなかったの!?」

「マオの言うとおりだ!何故言わなかった!」


「レイ姉のお父さんとお母さんが死んだだなんて!」


「…」

「マオ!」

マオの言葉に顔をそむけるレイ。

怒鳴るライ。

その言葉で、瞳に映る気持ちで、3人の信頼関係は見て取れた。

「俺は大丈夫だライ。マオも気にするな」

「っでも!」

「そろそろキキとガオウが来るだろ?悪い、俺は今日行けそうも無いんだ」

「…レイ、」

「…頼む、から」

「っ」

「1人にしてくれ…」

目を伏せ、大きな瞳に涙をいっぱい溜めて。

必死に声を絞り出す姿は健気。

(無理も無いか)

1人の時が一番心細く、辛いものだ。

なのに彼女は自ら1人になりたがる。

心配をかけないようにと。

「マオ」

「ライ兄…」

「今日は俺も行けそうにない」

「え?」

「1人というものは何よりも心細いものだ。レイの傍に誰かが居なくては」

「じゃあアタイが…!」

「お前は良い、俺が居る」

「ライ、兄」

「俺が居たいんだ」

マオの肩に手を乗せるライ。

その瞳には同情か、哀れみか、それとも幼すぎる恋心か。

「…分かった」

「すまないな」

「でも、レイ姉を泣かせたら承知しないからね!」

「それ位分かっているさ、マオ」

仲間だから、守りたいんだ

大切、なんだ。

  
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