Beast of prey

□第一部
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〜ライside〜

「…」

「……」

マオをキキとガオウの所へと行かせた後のレイの家の中。

いつも明るい彼女の両親が出てくるハズもなく、ただ暗闇の中での沈黙が続くだけ。

俺も、レイも一言も喋らない。

彼女に至っては小一時間微動だにしていなかった。

(俺に、何か出来ることは)

何も無い。

つい最近、長老様のお使いで水を汲みに行った時に寄り道をして怒られた位だ。

あの怒られた時に庇ってくれたのは、他ならぬレイだった。

蛇を見て怖がっているマオを宥め蛇を追い払ったのもレイ。

キキに武術を教えたのもレイ。

力が強く、大きいからという理由で苛められていたガオウを励ましたのもレイ。

そして、俺の親友であるのもレイ。

(俺達は、役に立っているのか…?)

彼女の手を煩わせたりしているだけのような気がするんだ。

何も出来ない悔しさ、無力、脱力感。

仲間なのに何も出来ないなんて悔しい。

仲間だから助けたいのに。

仲間だから支えたいのに。

それをさせてくれないレイは狡い。

自分一人で抱え込もうとするんだ。


「なぁライ」

「っな、何だ」

「俺、一人ぼっちなのかな」

「は?」

「…俺は一人ぼっちなのかな。俺の周りには誰も居ないのか…?」

「そんな事!」

「…だよな。変なこと言ってごめん」


レイはそれを言うなり再び膝を抱え、顔を埋めてしまった。

きっと今彼女に何を言っても無駄なのだろう。

もう、彼女には言葉なんて届かない。

あの時驚いて言葉を詰まらせなければ良かったのに。

今更後悔してももう遅い。

「レイ、」

お前は1人じゃないのに。

俺達が、居るのに。

お願いだから気づいて

  
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