短編集

□ナタク成り代わり
1ページ/1ページ



「無色ねーちゃん!」

「…天祥か」

周の陣地の一部。

燃えるように真っ赤な髪を揺らし、無色は天祥の向かってきた方向を見つめた。

「ねーちゃん!」

思い切り飛びつく天祥。

まさか後ろから飛びついて来るとは思っていなかったので、若干ぐら付いた。

「どうした」

「空へ行「ちょーっと待つさ」

「キサマ、何をする」

「天化にーさま!?」

いつものように天祥を抱いた状態で飛ぼうとした瞬間。

マフラーの部分を引っ張られ、そのまま天化の胸にダイブしてしまった。

…太乙が走って来ていたのは幻覚か気のせいだろう。

「宝具人間、今日こそ勝負さ!」

「ム…」

『勝負』という言葉に惹かれる無色。

そんな無色を見てなのか、兄と話している姿が不満なのか。

天祥は頬を膨らませ無色の腰に手を回し、抱きつく力を強くする。

「ねーちゃん、早く行こう!」

「天祥!今日はおれっちと勝負するさ。お前はいっつも遊んで貰ってんだろ?」

「いーじゃん!」

「よくないさ!」

マフラーを天化に引っ張られ、天祥に抱きつかれ困り果てていたその時。

「無色ー!!」

「…」

天化と天祥を思いきり遠くへ飛ばし抱きついてきたのは太乙真人。

「何処に行ってたのさ!今日は私の所に戻って来いって言ってたでしょ!」

「忘れた。どうせキサマの事だ、大した用事じゃないんだろ」

「まったく…今日は宝具の点検日!君が何でもかんでも壊すから」

「ふん」

一向に反省する気が無いのか気にしていないのかそっぽを向く無色。

「じゃあ帰るよ」

「宝具の点検はまた今度でいい」

「駄目!君は宝具人間でしょうが!」

「知るか」

「それは知らなきゃ駄目だからね!?」

「それに、」

「それに?」


「今日は雷振子と出かける約束がある」


「なっ…!」

驚き顔を蒼白にさせる太乙。

後ろには雷が落ちてきている。

「じゃあな」

「ちょ、無色待って!」


娘、親の気持ちを知らず


「遅れた」

「おう、気にするな!じゃ、行くか」

「ム」

   
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ