ワールドトリガー

□誰かが泣くことでしか、笑顔になれないのなら
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学生にとっては花の休日。
ボーダーの任務もなく久しぶりの休日を謳歌しようと思っていたら、タイミングを計ったようにかかって来た古寺から電話がかかって来た。


「もしもし?」

『え、一回で電話に出た…?』

「いきなり失礼だよ古寺」

毎回毎回二回目かそれ以降の電話にしか出ない(大体一回目の電話には気づかない)私に驚いた電話越し小寺の表情が脳裏に浮かんだ。
後ろの方で聞こえるのは、多分米屋先輩と奈良坂先輩の笑い声だと思う。


「で、どうしたの」

『迅さんから緊急招集。急いで本部に向かって』

「緊急?イレギュラー門の件は片付いたんでしょ」

『いや、たぶん人型近界民についてだと思う。俺達さっきまでそいつの相手してたか』


途中で切れる古寺の声。
どうやら誰かに携帯を奪い取られたらしい。
携帯越しに遠くで小寺が何か言ってるのが聞こえた。


『よお苗字』

「米屋先輩」

『今回はちゃんと一回で出たんだなー何?暇だったの?』

「家に居たんで今回は気付いたんですよ」

『普通は一回で出るもんだろー』


急遽変わった話し相手に若干戸惑いもしたが米屋先輩だったことで何となく納得してしまった。
奈良坂先輩は一言入れそうだけど米屋先輩は奪い取る姿しか想像つかない。


『ま、詳しい話は本部で秀次がすると思うから。急いで本部向かえ』

「もう着きましたよ」

『はやっ』


私が借りているマンションは本部からかなり近いのだ。
電話している間に財布を持ってコートを肩に引っ掛けて家を出た。


「もうすぐ会議室着くんで切りますね」

『りょーかい。あ、古寺返すわ』

『急に取らないでくださいよ米屋先輩…』


多分古寺は通話を切ってないことに気付いていない。
さっきから会話が丸聞こえだ。
…流石に会話を聞くのも忍びないし盗聴している気分になったので通話は切らせてもらった。




「あれ、名前ちゃん」

「…迅さん」

「早いね、古寺から連絡貰ったの?」


私の後ろから急に現れたのは迅さん…と、いつしかのメガネ君。
いや、メガネ君じゃなくて三雲君だった気がする。


「何でまた三雲君が居るんですか?まさかさっき古寺が言ってた人型近界民の件に絡んでるとか…」

「そのまさかだよ。このメガネ君が話の近界民を匿ってた」


「相変わらず勘鋭いねー」と言いながら私の肩をばしばし叩く迅さんに軽い殺意が湧いた。
話だけ聞く限り、今回の件はイレギュラー門といい勝負の重要なこと。
そんな問題の重要人物を連れていながら、よくそんなに気楽にいられるもんだ。


「…もしかして迅さん、前々からこの件のこと知っていましたね」

「え」


勘で言ったことなのにどうやら図星だったらしい。
動きが止まった。
元々この人は玉狛の人だし、それ位はありえるか。


「ほんとに勘鋭いねぇ、サイドエフェクトでも持ってる?」

「持ってませんよ。ただ貴方のことですから想像ついただけです」

「あははー…」


隣で明後日の方向を向いて頭をかいている迅さんを追い越し、会議室の扉に手をかける。



「失礼します」


「名前?何でここに…」


会議室に入れば根付さんに尋ねられた。
「迅さんに呼ばれました」と言って、根付さんの席の後ろに立った。

いつもの定位置に立った瞬間に鬼怒田さんがこっちを向いたので少し驚く。


「苗字は今回の件について何か知っとるのか?」

「いえまったく。とりあえず召集されたもんで、詳しい話はあんまり聞いてないんです」


そう言えば、折角の研究の時間が少なくなるとぐちぐち文句を言う鬼怒田さん。
あ、迅さんと三雲君が入ってきた。



「まあまあそう仰らずに、鬼怒田さん。幹部なんですし仕方ないですよ」



さあ、会議の始まりだ。



  
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