ワールドトリガー

□たった一つ願いが叶うのならば
2ページ/2ページ




終わりなんてほんの些細なことだった。



どこかのドラマみたいに悲惨な事故なんかじゃない、偶然が重なって起きたんだ。



あの時あんなに手を伸ばしたのに。



君の手には届かなかった。



何度も何度も私の名前を呼ぶ君の声が聞こえてくるのに。



私の身体は動かないの。











身体の動かない真っ暗闇の中で、建物の崩れる音がする。


その音があまりにも煩くて耳を塞ぎたいのに私の手は動かない。


がらがらと崩れる音が怖い。


助けて、と声を出そうとしても口から出る声は擦れ声で到底外へは聞こえないだろう。


どうにかして助けを呼ぼうと必死に身体を動かしてみるけど、溜まっていくのは疲労だけ。


眠たい。


きっとこれは悪い夢だと。


そう思って私は真っ暗闇の中で目を閉じた。








気がつけば、辺りは真っ暗だった。


私を取り囲む岩の隙間からほんのり日が差している。


自分のお腹が大きな音を立てた時、自分が空腹だということに気づいた。



「…!?……だ!」



岩の向こうから人の声がする。


どこかで聞きなれたような安心する声。


私と  をいつも守ってくれた声。


私のことを捜しに来てくれたんだ、


助けに来てくれた!










「ああ良かった…名前、お前が無事で…!」

「ねづきさん」

「さあ帰ろう、もう家は壊れてしまったけど安心しなさい」


根付さんは枯れ木のような細い腕で岩を退かし、私を助け出してくれた。


岩を退かした時に爪が何枚か剥がれたのか手が血で真っ赤だ。


小さな私を抱き上げて、手に血の付いてない部分で私の頬を撫でた。



「名前は私の家に住むんだよ」



泥だらけの顔で、血だらけの手で、涙で擦れた声で、根付さんは私に笑いかけてくれる。





「今日から私は、名前の家族になるんだよ」








その後根付さんから聞かされた  のこと。


  は根付さんが知り合いの家に養子に出したらしい。


  が新しく住む場所は三門市と言うらしい。


根付さんがボーダーにスカウトされて三門市に行くと聞いた時、迷わず私も付いていくと叫んだ。


あわ良くば  に会えますように。


一緒に暮らせなくてもいい、ただ  が元気か知りたいだけ。


そう思ってボーダーに入ったのに。


もう入隊してから何年も経つのに、捜せる場所は全て探したのに。





(どうして  に会えないの?)






もう一度君に会いたいよ。




  
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ