捧物

□月と星が交わる時
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俺達は濡れた手を繋いだ


何故か冷えている筈の水がやけに温かく感じた


それは二人の温もりがそうさせていると月子に教えられた


月子が急に立ち上がり走り出した


聡「お…おい!どうした!?」


水を蹴りあげる音が響く


月子「見て見て!!ここだけ凄い月明かりが強いよ!?」


月子の言う通りそこだけ月光が力強く差していた


はしゃぐ彼女に纏われていく水しぶき、乱反射する月光


この世で一番美しいものを見た気がした


屈託のない笑顔で全身に月明かりを受けとめる彼女


そんな彼女を俺は力いっぱい抱き締めた


月子「どうしたの…?」


訳がわからないような顔した彼女が問掛ける


聡「愛しているよ…」


そう彼女の耳に囁くと


月子「私も…」


そして俺達は最初で最後の口づけをした


長い長い…キスだった


そして…


聡「行こうか…」


俺達は…


月子「うん…お兄ちゃん…」


月光煌めく湖の中に…


禁じられた想いと一緒に…


落ちていった…。












      fin
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