捧物
□秋の季節
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雪埜「ねぇねぇ秋谷さん」
秋谷「ん〜?なんだい?」
赤とんぼが家の庭を寝床にしてあちこち飛び回っている
夕日が赤く燃え、大地をオレンジに染めていた
雪埜「秋谷さんの初恋っていつですか?」
秋谷「はは…こりゃまたずいぶんと突拍子のない質問だね」
僕は自潮気味に笑い白衣の胸ポケットから煙草を取り出し火をつけた
雪埜「いやぁ…なんかふと気になって…」
はにかんだ笑顔
彼女のこの笑顔は少なからず僕の渇いた何かを潤す
これは彼女の仁徳だろう
秋谷「ふぅ…僕の初恋は中学3年の秋だったよ」
煙草の煙が直線を描き静かに天へ昇る
雪埜「中3…ってずいぶん遅いですね?」
秋谷「その頃は色恋沙汰には興味無くていつも勉強したりしてたんだよ」
あの頃の自分を思い出し苦笑する
雪埜「相手の人はどんな人だったんですか?」
秋谷「彼女は…強くて優しくて、でも何処か危うい雰囲気を出す不思議な女性だったよ」
そう…いつも何を考えているのかわからなくて僕はヤキモキしてばかりだった
雪埜「ふぅ〜ん、その人ってタメなんですか?」
秋谷「いや、歳上。彼女は二十歳の大学生だった…」
今…彼女は幸せだろうか?