白銀の想

□白銀の想 18
1ページ/8ページ

一日、止まることなく浴びせかけられた叱責に涙を零さない様に耐え、解放された後。


レインは一人、部屋に閉じこもるなり堰を切ったように泣いていた。


彼女が叱られている時に泣かなかったのはきっとそれほど心配をかけ、
どれほど自分が酷いことをしたのか分かっていたから。
そして今までのことが憎くて彼女を叱っているのではなく、
大切に思うが故のことだと痛いほど伝わったから。

瞬きをしてしまえば零れてしまうため、それ一つせず、
一日中こちらをまっすぐに見つめ、口を開くことなく黙ってそれを聞いていた。


そんなレインは必死に声を押し殺して泣いているのだが、
部屋の前で心配する4人には意味が無い。


「ちょっと言いすぎちゃったかしら…。」
「…かもな。」
「1時間以上は続いてる」
「そろそろ止めてやった方がいいんじゃね?」


泣いている彼女には聞き取れないほどの小さな声でぼそぼそと呟く4人。
最後のネロの提案に同意を示し大きく頭を振るダンテ。

昨日からの説教で、一番激しかったのはダンテだった。
一番レインを甘やかしていた彼の叱りはとてつもなく、
もちろん手を上げることはしなかったが元来の性情なのか、
直球に物事を言うことが多いので、放たれた言葉は激しさに増しての威力があった。

因みにトリッシュとバージルは、
一から十まで何処が悪かったかを列挙、切々と語るタイプ。
ネロは、ダンテと似ているが今回は先のようにダンテが余りに激しかったため、
そこまで大声を張り上げることも無かった。
あくまで『そこまで』で別に甘かったわけではなく、周りから見ればそれなりに酷い。


それを思い出し、言いすぎたと一番後悔しているのはダンテなのかもしれない。
と3人は思う。


「まぁ、ダンテのは叱責じゃなくて、叱咤に近かったかもしれないわね。」
「わかってる…。」
「お前は感情に流されやすいからな。」
「それはバージルにいわれたかねーよ。」
「おっさん、んなこと言ってないで反省しろ。」


ネロはそうダンテに言うと、ノックを数回、入室を許可する言葉も待たず部屋に入る。
何処にいるのかと視線を廻らせれば、扉のすぐ近く、
部屋の隅っこの冷たい床に膝を抱えて座り込むレイン。
着替える暇もなく説教は始まったので、向こうで来ていた白いドレスままの彼女、
それは床に広がり、ひくっと息が跳ねるたびに小さな波を立てていた。


「レイン、もう泣くな。」


肩を優しくたたけば、顔を伏せたまま頭を振る。
いつまでたっても泣き止まず、これでは埒が明かないと
両頬に手を添えて無理やり顔を上げさせると、泣き腫らして真っ赤になった目が。
そのまま目があったレインは何かをこちらに言おうとパクパクと口を動かすのに、
そこから漏れる声は小さくて何を言っているのか聞き取れない。


「苦しくなるから何も言うなって、ゆっくり息吸ってみろ。」


優しく背中をさすれば、言った通り小さく息をし始める。
少し続ければ大分落ち着いたのか、もう一度口を開いた。


「ごめんね。こんなに泣くつもりなかったのに…、中々止まらなくて。」


それだけ叱られたことに傷ついたか?と聞けば首を横に振る。
強く首を振るので眦に溜まっていた涙が一滴、頬を伝って流れる。


「じゃあ、なんだよ。」
「…嬉しかった。帰って来れてよかったって。」


こんなに泣いているのに
まだ辛いであろうレインは精いっぱいの笑顔でありがとうとお礼を言う。
正直、それに罪悪感が増したネロだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ