籠越しから見る空

□籠越しから見る空 8
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今さらな話。
クローゼットの中を見ていると左腕の部分が切り裂かれた私の制服が見つかりました。


それを下まで持って降り、なんで?と首を傾げる逢夏にネロは思い出したように制服を見る。


「勝手に捨てるのはいけないかと思って入れといた。」
「そうなんだー、ありがとう!ん…?何か入れてたっけ?」


ごそごそを異様に膨らむポケットを漁る逢夏をじっと見つめるダンテ、ネロ、トリッシュの3人は
小さなそこから大量に物を取り出し始める逢夏に呆れた様に揃えてため息をついた。


「そんなに大量にどこ入れてんだよ…。」
「ポケットだけど?」
「見りゃ分かる。」


色々と無視してるところがあるだろ、とまた一人ため息をつくネロとは違い
ポケットから出てきた飴やチョコレートを手に取りながら


「お前…あんまり真面目な生徒じゃなかったろ?」


と苦笑気味に言うダンテに逢夏は少し眉根を寄せた。


「まぁ…確かに、優等生ってわけじゃなかったけど。そこそこ、本当にそこそこ良い生徒だったよ!」
「そこそこで胸を張って言わないの。」


逢夏の額を人差し指で押すトリッシュは面白そうに笑って、他には?と促すので
面倒だからと全てのポケットをひっくり返して出てきたものをそれぞれテーブルの上に並べた。

思ったよりたくさん入っていたようで、自分のものであるにも関わらず逢夏は驚いていたがそれよりも


「わー!この飴、好きだったの!」


まだ食べれるかな?と驚きよりも食い気。
そんな菓子に目の向く逢夏に対して3人の目が向いたものは一つだった。


「これは?」


いち早く手に取り、ぱかぱかと折り畳み式の携帯を開けたり閉じたりするトリッシュ。
その後ろではネロとダンテが興味深そうにそれを覗き見る。


「携帯電話だけど。…あれ?」


未だ開けたり閉じたりを繰り返されるその間見え隠れするのは設定していた壁紙。
おかしい…。
普通一か月以上ほど放置していたはずの携帯の電源が生きているなんておかしすぎない?
トリッシュから受け取りバッテリー残量を確認すると不自然にもそれは99%。
減らないどころかむしろ増えてる?
それに…大体携帯は鞄に入れていたから、向こうに置いてきたはずなのに。
訝しみながらも操作を繰り返せば、設定もパスワードも全て自分のもので間違いなかった。
そんな不可解な小事態に頭を悩ましていたところにネロは手に持つ携帯を指差す。


「で、何に使うんだ?」
「『電話』、そのままだよ。
 ここでは使えないけど向こうだとこれを使って何処でも電話できたの。
 他にもメールを送ったり、ネット接続が出来るでしょ、カメラの機能もあるし。
 あ、辞書としても使えたりするし、ゲームでも遊べたり、音楽も聞けたり…」
「待て、そんなにいきなり言われても困る。」


ネット…接続?と何の事だか分からないと言った風にそれぞれいろんな意味を思い浮かべ始める3人に
掻い摘んでそれをゆっくりと説明していくと一人納得がいったのはいつの間にか来ていたレディだった。


「私をおいて随分面白そうな話してるじゃない。」


少し不機嫌そうに息をつくレディは
確かにこういう話題に一番興味を示しそうな人物。
そんな彼女を意図してではないけれどのけ者にしてしまうのは…。


「ごめんね、そういうわけじゃなかったんだよ。」


目の前で両手を振って悪気がなかった事をアピールしていると、寄せられていた眉が緩んだ。


「じょーだんよ。このくらいで不機嫌になってどうするの?
 それで、何か良いものでも見つかったかしら?」
「良いもの…かは分からないけど。懐かしいものなら見つかったよ。」


これっ!とテーブルに広げた物
飴やチョコレートの菓子類に友人に回していた手紙に小さなメモ帳などを指す。


「それにね、さっきも言ったけど。携帯にはカメラ機能があるから…。」


手早く操作をして出したのは妹と写る画像。
逢夏よりも年上になってしまった妹の姿しか見た事のなかったネロたちはそれを見ると全員で同じ方向に首を傾げる。


「私の妹!家族で旅行に行った時に撮ったんだー!」
「…妹と逢夏って似てないな。」
「だよね。いっつも言われてた。
 私もそう思ってるけど…姉妹ってそんなもんじゃないのかな。」


他にも色々あるからと次々に画像を変えて見せていっている時だった。
とある写真でネロからストップがかかる。


「こいつ、誰だ?」
「私の友達、クラスメイトだよ。」


疑問を持たれた写真は3年に上がった時にクラスメイトと撮った物。
携帯の画面を横にして撮った、結構大人数の写真をネロが指先で私の隣の人物を指した。


「違う、やけに馴れ馴れしそうなこいつ。」
「…幼馴染の子だけど?」


指されたのは、幼稚園から高校まで一緒という、摩訶不思議な腐れ縁だった男の子。
確かに馴れ馴れしいと言えば馴れ馴れしい奴ではあったけど、根はとてもよくてクラスでのムードメーカーだったんだよ。
と説明すると、むっとするネロは見ている間に操作法を覚えたのか他の写真に変えてしまう。


「どしたの?」
「なんでもない。」


そこでなんでもないことなんてないくせにと呟くレディの頭に
ネロの手刀が落とされたのをダンテとトリッシュは面白そうに見ていた。
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