籠越しから見る空

□籠越しから見る空 12
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今日も今日とて暑いあつい。
気温もさることながら、私は別の理由で暑いけど。

「ネロ、私も暑いんだけど。」
「もうちょっと…。」

手が冷たいからとネロに両手を掴まれ頬に当てられてる状態が十数分前から続いてます。
確かにネロの頬はとても熱くて、辛そうなのは分かったよ。
でも、こんなことしなくても。

「濡れタオルとかそういうのの方がよくない?もっと冷たいよ?」
「用意するのが面倒だ。」
「用意くらいしてあげる。だから手、離して?」
「いやだ。準備されてる間に俺が溶ける。」
「氷やアイスクリームじゃないんだから…溶けないよ。」

逢夏の手でいい。寧ろこれがいい。
と相変わらず訳の分からないことを言い続けるネロは大分暑さで参り始めた証拠。
まだこの暑さは続くし酷くなると言うから…私はいつまでこうしていればいいのやら。

「まだ暑くなるんでしょ?このぐらいでぐったりしてたらダメだよ。元気出して。」
「言うなよ…。人が珍しく現実逃避してんだからさ。しかも元気出せって、何で逢夏はそんなに………いや、もういい。」

疲れた。
何もしていないのに何が疲れると言うのか、目を閉じてじっとするネロに
…そーっと音も立てずに近づく一人の姿があった。

「レ…。」

言いかけると立てた人差し指を口元に当てて『静かに。』のジェスチャー。
ネロは全然気付いていないようで、レディの魔の手が忍び寄ることを知らずだれたまま。
魔の手、そう魔の手だ。隠しながら手に持ってるあれは…。

「ネーロ。」
「…。」

レディの声を聞くや、完璧に無視を決め込んだネロは頬に当てていた逢夏の手を今度は耳に当て聞かない体勢に入る。
それにむっとするレディはその耳元に顔を近づけた。

「無視しないの!ほら、こっち向きなさい!」
「しつこいな!一体何だよ!俺は今暑くてあんたの相手してる場合じゃ…ぶっ!!」
「暑いんでしょ?涼しくしてあげたのだから、私に感謝して頂戴ね。」

涼し気になったところでお役はご免よ。とレディの活躍によって逢夏はするりと逃げるように離れていく。
が…それはネロの気に召さなかったらしく、怒りの矛先は原因のレディへ。

「何が涼しくなっただよ!いきなり人様の顔面に水かけるって一体あんたはどういう頭してんだ!?」
「暑い暑いって不景気な顔で言ってるからよ。逢夏が困ってるなんてお構いなしなネロにどういう頭って聞かれたくないわね。
 反対に聞き返してあげる。貴方ってどういう頭してるのかしら?」

手に持ったあれでネロの頭をコツコツと叩くレディは何かにネロを誘導していくように煽っていく。
それが分かっているものの、ただでさえ暑さで苛立つネロは目の前のテーブルを叩き勢いよく立ち上がるとレディを睨んだ。

「…あんたがしたい事がよーく分かった。」
「何?やる気になってくれた?」
「あぁ…仕方ねぇからその喧嘩、買ってやるよ!!」
「そう、それは助かるわ!じゃあ準備してきてくれる?
 逢夏は濡れていい服に着替えてらっしゃい。ダンテ、トリッシュ!貴方達も!」

てきぱきと指示を各自に伝え始めるレディに一同目を丸くして
特にネロは何故逢夏やあの二人が出てくるのだと呆気に取られ、怒りを忘れてレディを見る。

「何する気だよ?」
「逢夏が見ても恐くない銃で安全にあそぼうと思ってね。」
「恐くない?何言って…。」
「ネロ…貴方の頭が随分察しの悪く出来てるって今よく分かったわ。…これよこれ。」

読めずにいるネロに向けられたのは…先ほどの水をかけた正体の物。
軽く引き金を引いてもう一度ネロに水をかけ、遊びの趣旨を一発で表すレディは悪戯っぽく笑った。
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