籠越しから見る空

□籠越しから見る空 17
1ページ/6ページ

映画などで見る丸く数種類の色と数字が持つあれがデスクの上に大量に置かれていた。
それは長く住み慣れた国ではお目にかかる機会などないポーカーチップ。
しかし用途くらいは知ってる。
といっても自分がどれくらい賭けるのかとそれを表す…くらいしか知らない逢夏はダンテの提案を繰り返す。

「本当にお金を賭けてポーカーをするの?」
「あぁ。ここだとお前も立派な成人だし、まぁ元々ここは法律がどうたらって場所じゃないだろ?」
「でも、私…自分で自由に使えるお金がある訳じゃないし…それに賭けてどうするの?」
「そう言うと思って今回はトリッシュの代理をやってもらう事にした。
 勝って増えた金は好きに使えばいいし、負ければ…トリッシュが少し困るだけだ。」

でも、と言い募ろうとすると更にダンテの説得が入り、いろんな遊びを覚えるのも楽しいからと押し切られる。
確かに今までポーカーなんてしたことがない、ルールさえ知らない。
賭け事でなく遊びでなら興味がない事も無いというところに上手く付け込まれた気がしながらも…

「トリッシュ…本当にいいの?」
「別に構わないわ。正直なところ、貴女が勝つか負けるかで二重の賭け中なの。」
「責任重大ってこと…?」
「そうね。」

にっこりとした微笑みに一瞬いろんな意味で目が眩みそうになった。
大体なんでなんだろう、借金がどうだと言っていた人達がこうやって…というか

「ネロまで…。」
「仕方ないだろ、俺は嫌だって言ったんだからな。」

などと言いながらやる気満々のネロは多分…ダンテに賭け事も出来ない子供かとか言われたに違いないと容易に想像がついた。
後は逢夏だけ。という視線がすごく痛くて…早く決めないとってすごく焦ったけど…

「…よしっ!女は度胸、だよね!」
「そう、その調子。」

用意された椅子に座ると後ろでトリッシュはその背もたれに頬杖をついて逢夏の手札を見守ることに。
一応出資者なのだから口を出す権利はある、というか役もしらない初心者なのだからと二人ですることになる。
それでよかったと本当に思う。度胸…とは言ったものの手元に渡った5枚のカードを見るが、やはり何のことやらさっぱりだったからだ。

「これどうすればいいの?」

分からなければ聞こうと後ろを頼りに振り返り見たトリッシュ。
とその人は少し驚いたように、そして何故かすごく嬉しそうに微笑む。

「どうかした?」
「いいえ、なんでもないわ。」

くしゃくしゃと私の頭を撫でたトリッシュはレイズとか言ってるけど…
結局なにがなんだかわからないままゲームは進んでいく。
でもあくまでやるのは私、という事でアドバイスこそあれ、交換するカードを決めるのは私の役目だった。

「逢夏、それは切った方が良いかもしれないわ。」
「これ?…んー、でも。」
「どうしたの?」
「こっちがいいなって。」

こうやってアドバイスを聞かないでやってもトリッシュは全然怒らない。
というよりもむしろそれでいいと微笑んでくれていてすごくやり易く感じた。
…それで。

「なんで一回も勝てねーんだよ…。」
「トリッシュ、貴女まさか逢夏にイカサマさせてるんじゃないでしょうね?」
「させるわけないでしょう?」

皆それぞれ持ち金も少なくなった所でそんな会話が始まった。
ネロとレディ、そしてトリッシュの言い合いに意味を理解しかね参加出来ない逢夏にダンテはこっそりと話しかける。

「…いいか逢夏、こういう役ばかり出してると寿命が縮むんだぞ?」
「そうなの!?…どうしよう…。」

と事務所は徐々に騒ぎを大きくしていく。
その原因は言わずもがなあわあわと慌てる逢夏の前にそびえ立つ周りから根こそぎ奪い取ったチップの山だ。

「断言させてもらうけど、イカサマは全くしてないわ。第一、通用する人間がここにはいないでしょう?」
「じゃあどういうことなのよ。」
「もう一度やってみればいいじゃない。」

ばらまかれたトランプを一纏めにしたトリッシュは作為的な行為も無く、ただシャッフルを繰り返し五枚を人数分配る。
そこで逢夏の所に配られた5枚をひっくり返すと…

「…ほぼ役ができてる。」
「そう、それも本当にイカサマしてるみたいに強い役ばかり。
 惜しいけどそうにもなりそうにないって時ももちろんあるのよ?
 けど他の役を狙ってカードを捨てようとしたら逢夏がこのカードはよりもこっちって、そうしていたらこういうことになったの。」

ビギナーズラックなのか、それとも生来の運なのかそこの判別はできないが

「この賭けは文句なしで私の勝ちね。」

声高らかと言っても差し支えないほどの声をもって今回の賭けは幕を閉じた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ