ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□通学と交通機関
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今日は土曜日。
"土曜日はパジャマでリビングをごろごろすべし"
なーんて勝手に決めた柚々子法典の一ページを読みあげてそれに従ってカーペットの上をごーろごろ。
気にいってるニュース番組を見つつ、朝らしくフルーツジュースなんかを飲みながらだらしなく過ごしている時だった。

ピンポーン。

と朝っぱらから…って言ってももう9時だけど、家のチャイムが鳴る。
その音を聞いても一向に出ようとしない母の方を向けば、その母はキッチンのカウンター越しに忙しいからお前が出ろ。と目で宣う。
こんな時間に誰!っていうか私、パジャマだから出られないんだけどっ!?
…そう思ったけど、まぁこんな時間に来るとしたらよく知った近所の人達かもしれないし。
長い付き合いだからパジャマ姿くらいゴミ捨ての時に何度も見せてるからいいや。って開き直って
とりあえず上に羽織れるものを羽織って出たんだけど。

「はいはーい。どなたですかーっと。」

ガシャンと開けたところには見慣れた団地のおばさんや子供たちではなく…新しい隣家の3兄弟。
自分でも分かるくらい目をパチクリ。思考が一瞬止まった…けど。
オーケー、私。ここはまず落ち着こうじゃないか。そうそう、ステイクールってやつだよ…うん、うん。よし!十分落ち着きました。

「お母さーん、ピンポンダッシュだったっぽい。」
「ちょっとまて!」

勢いよく閉めようとしたところに隙間に足が入れられた。それを確認した後、見上げたネロの顔の怖い事怖い事。
ネロ、こんなことくらいですぐにキレるのはどうかと思うよ。
だって後ろのダンテさんは大笑いだし、バージルさんに至っても声を殺して笑ってるもん。
冗談だって気付かなきゃこの先やってられなくなると思うんだよね。

とりあえずパジャマ姿なんて見せられるわけもないのでなるべくドアの陰に隠れるようにして話すことに決めた。

「それで…何の用でしょう?」
「ちょっと柚々子ちゃんに頼みがあってきたんだが、まだ寝てたのか?」
「寝てたって言うより…ごろごろしてました。」
「そうだったのか。それは邪魔して悪かったな。」
「そう思って頂けるなら日を改めて後日またお尋ねください。」

さよならーとダンテさんに告げつつ早くこの恥ずかしさの地獄から逃げだそうと思ってネロの足がない事を確認して閉めようとするんだけど…。
そこを今度はバージルさんに止められた。

「柚々子には悪いが、少し重要な話があってきた。話を聞いてくれないか?」
「…重要?」

コクリと頷くバージルさん。それに続くダンテさんとネロ。…さて、重要と言われたら聞かない訳にはいかないし。
かと言って立ち話もなんだし…と言っても今この格好を丸々見せるのは私の羞恥のゲージを遥かに突破しちゃうし。
と思っている時に限ってうちの親はやってくるもんで、すっごく助かる。

「柚々子〜、早く朝ごはん食べちゃいなさ…あら、いらっしゃい。」
「「「おはようございます、小森さん」」」
「はい、おはようございます。……柚々子?」

あぁ、そんな目で見ないでよ!分かってるよ、すっごい分かってる!
あれでしょ?失礼だと思わないの?でしょ?
わかってるんだよーーーー!

「わーーーん、おかーさんのばかーーー!」
「こらっ、柚々子!」

応対はお母さんに任せることにして、向けられた四つの視線に耐えきれなくなって自室に逃亡することにした。
もう嫌だ!絶対に二度とパジャマでごろごろなんてするもんかー!

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私、涙が出そうだよ。会ってばかりなのにね、思いっきりプライベートなとこ見せちゃってね、あんな視線送られてね。
情けない。って自分でも思いながら着替えてリビングに降りてみれば3人が家の中をキョロキョロとしていた。

「えっと…改めまして。おはようございます。」
「あぁ、おはよう。」
「good morning.柚々子ちゃん。」
「おそよう、ねぼすけ。」

もちろん上から長男、次男、三男の挨拶。
にしてもネロは酷いと思う。

「バージルさんは素敵な挨拶ありがとうございます。」
「?。あ、あぁ。」
「朝から英語を聞くと頭が痛くなるので止めて下さい、ダンテさん。」
「そうか?」
「ネロは酷いよ。だって今日は土曜日なんだから普通にごろごろしてるのに決まってるでしょ…。」
「勝手に決めるな。」

勝手に決めるよ。だって私の土曜日なんだよ?。もう止めるけどさ!
はぁ…とため息ひとつ、重要な用件を聞くことにしたんだけど…。

「柚々子、お財布。あ、お金は足りてる?」
「へ?なんで財布がいるの?」

まーたこのパターン?
今度はあれでしょ、私がいないうちにバージルさんかダンテさんがお母さんに話したんでしょ。

「…あの…用件ってなんですか?」
「娘さんを一日俺達に貸して下さい。それだけ。」
「へ!?」

わーぉ、ダンテさんすっごい笑顔ですね。
って!?…貸して下さいっておかーさん!あのね、一人娘をほいほい他人に貸さないでよね!

とか思ってる間にさ、連れていかれちゃうんだよ!
…もーいや!
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