ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□クラスと合宿
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見渡す限りのやま、ヤマ、山な風景。
ところどころ新緑の中に白や赤が混ざっているのはきっと山ツツジ。
山ツツジ、と言えば5月上旬で、その5月と言えば、新入生の私もネロも少しずつ学校に慣れ始めた頃なんだけど。

「ネロ、集合場所はこっち!」
「っ……待てよ!そんなに引っ張んなって!」

今はひたすら山登り。
さて、ここで私は私自身に一つ質問を投げかけたいの。

『なんで今こうやって山登りをしているのでしょーか?』

って!
それでさっそくだけど自答しちゃう。
今日から一泊二日でお泊りがあって、山の上にある宿泊施設まで各自集合なので一生懸命急な坂道を延々と上ってるという訳なんですよ。

「…47、48、49、ご〜〜じゅう。」
「おいっ!今50の間に2歩歩いただろ!」
「え?何のこと?」

ただね、普通に上ってちゃ楽しくないから、今はこうやって50歩ずつでじゃんけんをしながら上ってる最中。
もちろんじゃんけんで負けた方が荷物持ち、勝った方は手ぶらで進めるというルール付き。
麓からそれを続けてるんだけど、今のとこ全勝の私は元気で、全敗のネロはくたくただったりする。
そして今度も…?

「私の勝ちー!」
「なんでだよ!?」
「しーらない。ほら、ネロ、頑張れー!」
「納得いかねぇ…絶対おかしいだろ…これ。」

大体なんで俺がこんなところに来なきゃいけねーんだよ。
これ、希望者対象なんだろ?希望してねぇし…。
とかぶつぶつと呟きながら私の荷物も持って足を進めるネロ。
そうだよね、ネロって来そうになかったのになんでここにいるんだろう?

「ね、なんでここに来るって決めたの?」
「そんなの…兄貴達の所為に決まってんだろ?」

騙された。こんなことなら来なかった。とまた愚痴を始めるネロに適当に相づち打ちながらも上り続けること数分。
ようやく辿り着いた集合場所には、

「柚々子!遅いよ!」
「ごめんー!山登りって慣れなくって!ネロ、ここまでありがと、ごくろーさま!」
「後でジュース一本な。」
「えぇ!?ちょっ、それはじゃんけんに負けたネロが悪い…」

『点呼を取るので、新入生はこちらに事前に割り振られた班員と一緒にあつまってくださーい。』

言おうとした文句はこの合宿を企画をした先輩の拡声器の声にかき消されてネロには届かなかった。
でも、まぁいっか。ここまでネロが頑張ってくれたんだし。
ジュースのついでにたくさん持ってきたお菓子もつけちゃおうとか少しサービス精神旺盛にしてみて荷物を持つと言われた通りの場所に集まることにした。

何度も言うようだけれど、今日から合宿。
大学に入って合宿?どういうこと?って他大学からは思われるかもしれないし、私自身思ってた。

そんなこの合宿イベントのお話は4月初め、入学式が終わってすぐ後のガイダンスのことまでに遡る。
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