水月は紅の記憶に漂う
□武器の話
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幻の後、目を開けると映るさっきと変わらない場所。
見ている景色は変わらない。
でも変わったのはふわふわと地に足がついていなくて夢の中にいるみたいで、まるで本当に海月になったみたいってことで…。
"なんでこんなことになってるの?"
考えていると近くでダンテとリベリオンの声が聞こえた。
「見かけによらず、えげつない武器になるんだな。」
「魔具などそういうものだ。」
えげつないとはどういう事だろうか、というか一体私はどうなってるのか、それをダンテに聞こうとして振り向くと
スカイブルーの目は何故かマジマジと私を見つめていた。
でも…その瞳に映ったのは、私じゃない。
『…蒼い刃…?どういう事?ねぇ、ダ…』
『無駄だ、魔具化している間の声は魔具にしか聞こえない。』
響いたリベリオンの声。
水の中を漂うような感覚を利用してぐるんと空間の中を半回転して向きなおした方ではさっきと変わらない場所でリベリオンが腕組みをして私を見ていた。
『魔具…化、私が?』
『他に誰がいる?…とにかくだ、クヴァレ。』
『なに?』
『今は集中した方がいい。』
変な感覚。
真っ暗な空を仰いでいると目前に迫る悪魔…が一瞬でクリアに視界は移り変わる。
振り返るとそこには切り裂かれた歪な影が砂に戻るところだった。
そこに響いたダンテの声。
「長柄武器なんて久しぶりだな。」
「あまりはしゃいで酷使してくれるな、クヴァレが混乱する。」
「はいはい、分かってるさ。」
「……はぁ。」
長柄武器?
そこでようやく自分の体を視界に入れてみた。
見えたのは、薄らとまるで幽霊のようないつもの姿に重なるように黒い柄に蒼い斧頭がついた武器。
『なっ、…なに、これ?…ゃ…やぁぁぁ!』
『クヴァレ?』
気がつくと気持ち悪くなった。…すごく、すごく。
頭が痛くて、眩暈がした。
それは悪魔を切っていく度に、一瞬だけ…ダンテの目が赤く光ったように見える度に強く、強く。
だから何かしがみ付く物が欲しくて一番近くにいたダンテに精一杯手を伸ばしたけれど…
楽しそうに笑う顔が見えたと思うと意識を手放してた。
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「俺は無茶をさせるなと言ったはずだが。」
「仕方ないだろ?初めての武器はいろいろと試してみたく…」
「もう少しクヴァレのことも考えろ!
魔具化が初めてのこと、しかも魔具としての自覚も今まで無かったクヴァレにとってどれだけの負担になってると思うんだ!」
しかもクヴァレは何処か破損しているというのに、…などと小言を言い続けるリベリオンに
ダンテは反応がなくなったという手に持っていたハルバードもといクヴァレを渡す。
魔具が気を失うなどとは正直可笑しく、けれど今笑えば更に雷が落ちるだろうと必死に堪えるが
もちろんそれを知るリベリオンは気付かないふりをしてクヴァレを受け取った。
「青い刃。やはりあの時の悪魔が持っていたものとよく似ている。」
「とは言え…刃の部分は壊れている様に見えないが。…どういうことだ?」
「ブレスレットの魔力で形だけ治って見えるだけだ。
外見だけで中身はなく異常に脆くなっている箇所がある。」
言いながらリベリオンが撫でたのは斧頭の反対にあるピックの部分。
見れば確かにあの短剣と形が一致している様だった。