ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□夏空とお姫サマ
1ページ/10ページ


「そ、そんなの無理!」

私的には手に持ってたハンガーを普通にかけ直しただけなんだけど、思いのほか取り乱しちゃった所為でものすごい音を立てちゃったみたい。
店員さんに大丈夫ですか?って顔をこっちに覗かせて笑顔で聞かれたから、小さく頷いて大丈夫でーすをアピール…の後っ!

「無理だよ、無理!こんなの恥ずかしすぎるよ!」
「はぁ!?何言ってんの、男と海行くんでしょ!?お・と・こ・と!!!」
「声が大きいって!」

なるべく小声で話しかけたのはすっごく他人事だと思ってすごく際どい水着を持っちゃってる私の幼馴染。
そっとハンガーを持つ手に私の手を添えて、元あった場所へと導く訳ですが…パシンとはねつけられて首をブンブン振られた。

「全く、どうせ私を呼んだってことは"自分じゃ選べないっ!だから決めてー!"ってことなんでしょ?
 なら決定!これにする。」
「ちょちょちょっ!お願いだから考え直してよー、ね?」

そんなん着ちゃったら私の大学生活と私生活が終わっちゃう!
だって、同行者というか連れていってくれる家族はお隣さんだし、その内3人は同大学だよ!!

「本当にお願い!」
「…。」
「報酬にレアチーズケーキプラスだよ?」
「よろしい。」

なんにしよっかぁ、ってまた頭をリセットして考え始めてくれた友達を横目に私もちゃんと探してみる。

あ…その前になんで海なのか、その話を思い出してみよっかな?

--------------------------

「あ〜〜〜づい〜〜〜!エアコ…」
「だ〜め、禁止って何度言えば分かるの?」
「そんな殺生なぁ!!!」

だってだってこの暑さはやばいよ!?
ほら、温度計30度差しちゃってるよ!?
わーん、ってバタバタ暴れて駄々をこねてみるけどお母さんは私に取り合わないでリモコンを持ってどっかへ。
無視されて空しいし、暴れちゃって更に暑いし…最悪な気分でリビングのフローリングの冷たさを満喫してた時に

「突然すみません、小森さん。いらっしゃいますかー?」

あ、これはエヴァさんの声だ!

「はいはーい!いますよー!」

バタバタと音を立てて玄関に行くとそこにはつばの広い帽子を被ったワンピース姿のエヴァさんが!
…お嬢様だ、貴婦人様がここにいる!!!?
これで海の側、白い砂浜で立ってると絶対そうだよね。なんて想像しながらぼぅっと見惚れてると

「柚々子ちゃん、丁度良かった。聞いて欲しい話があるの。」
「はい、なんでしょう。」
「夏休み、何か予定入ってる?」
「入ってないですよ。明日何があっても平気なくらい暇です。」
「まぁ!よかった!それじゃあ早速明後日行きましょう?」
「明後日?」
「えぇ、明後日別荘に。」
「へぇ〜…、別荘ですか。いいですね……ん?…べ、べっ」

別荘!!!!????

大声で叫んじゃったけど、私の反応って間違ってないよね!?

--------------------------

「ふぅ〜ん。で、その別荘は海の側だから水着が欲しかったと。」
「うん。」
「向こうの親が同伴だけど、彼氏と海。いいねぇ。」
「ぶはぁ!?彼氏じゃないって!!!」

何言うのさ、いきなり!思わずメロンソーダ吹き出すところだったじゃん!
バンバンと机を叩いて猛抗議の後に、幼馴染がしたのは"分かった分かった"とか絶対分かってない感じの返答だけ。
んで、そしたら最後のカフェオレを飲みきって

「さてと〜!それじゃあ柚々子の勝負下着選んできますか!」
「な…はぁ!?そんなもんまで頼んでない!っていうかいらないし!」
「いらないってことは無いでしょ〜?なにがあるかわからないじゃーん。」

んべーって舌を出した幼馴染は会計を私に任せてふらふらとランジェリーショップへ。
あー、もう!なんでもかんでも話せる子だけどなんでもかんでも好き勝手に進めてく子なんだからこいつは!!!
私も普段はちゃらんぽらんで人の話を聞かないけど、
更に聞かないこの幼馴染に付き合ってお金を払うとちょっぴり入り辛いその店に思い切って飛び込んだ。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ