ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□暗闇と誰か
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『10月○日、大学傍のバス停で不審者の目撃情報がありました。
 バスを利用する学生は一人での帰宅はせず、複数人で帰る様に心がけてください。』

そんな張り紙が貼られた掲示板をネロと二人でじっと見つめてみる。

「不審者、怖いね。」
「目撃って何かされなきゃ不審者って分かんねぇだろ、普通。」
「わざと伏せてるらしいよ。
 噂によると警察沙汰になったらしいって、被害を受けた女子学生はショックで休学しちゃったっていうし…。」

本当、こういうことなんて無くなっちゃえばいいのに。
人に迷惑をかけるなんて最低だよね。
それにあそこのバス停はよく使うから他人事じゃいられないよ、…まったく。

「怖いのか?」
「一応…部活の時間とかで遅くなる事はあるから…。…なに?この手は。」
「部活は一緒だし、帰りはいつも俺がいるだろ?だから、大丈夫。」

頭を撫でてくれたネロは先に講義室に歩いて行っちゃう。
初めて見たとてもとても真剣そうな表情にすごくびっくりしちゃってあんまり話を聞けなかったけど…
えっと、『大丈夫、俺がいるだろ』って。
もしかして…ネロが守ってくれるってことかな?

「ありがと!」
「何がだよ。」
「危ない人から私を守ってくれるんでしょ?だから!」
「別に誰もそんなこといってねぇよ。」
「もー、照れちゃって!このこの〜。」
「うざっ。」

そうだよ、怖くない怖くない。
こうやってすぐに大丈夫だって言ってくれる人がすぐ傍にいてくれてるんだから。

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待ちに待ったお昼の時間。
先生である二人もあの張り紙が貼られた後に遅く帰るゼミの学生には特に一人で帰るなと言い聞かせるようにって言われたらしくって。

「まぁ、うちのゼミ生は車とバイクの奴が多いからな。
 あのバス停に近づく奴はいないみたいで少しは安心してんだ。」
「とはいえ、大学にあそこまで近いあのバス停で起こった事なら構内で何かあってもおかしくはないだろうな。
 そういえば最近部活で忙しいと聞いたぞ。
 ネロは平気だろうが、柚々子は気をつけるようにな。」
「うん、ありがとね。」

心配してくれてる二人にお礼をちゃんと言って…
さりげなくダンテのお皿から唐揚げを一つ取ってると私のお皿からネロがハンバーグを一欠片持ってくのが見えた。

「あ、なにすんのさ!」
「なにするはお前だ、柚々子!
 俺の持っていきやがって!」
「ダンテのはいいんだよー、バージルが好きにしろっていってたもんね!
 ねー、バージル?」
「あぁ。」
「あぁ、じゃねぇよ!ならお前のよこせ!」
「何故俺が愚弟にやらねばならんのだ。
 ネロから貰え。」
「俺の!?やだね、ぜってぇやらねぇかんな!」

なんだかとても賑やかなお昼!
あんまり4人で揃って食べることが無いから時間が合って一緒に食べられるとなるとついつい賑やかになっちゃうんだよね!
とそこで仕方がないから私がバージルのお皿のお魚に箸を伸ばすとその時久しぶりに見たバージルの黒い笑み。
それに思わず箸が止まってると…パフンと口に押し込まされたタルタルソースがたっぷりのった魚のフライ。

「むぐっ!?」
「そんなに食べたいならそう言えばいいものを。
 俺はダンテともネロとも違う、好きなだけ食べさせてやるぞ?」
「ひへ!ほひほーはまへふ!(いえ!ごちそー様です!)」

残念って感じに笑ったバージル。
うぐぐ、食べられるのは嬉しいけどなんかちょっと複雑だよー!
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