ようこそ、悪魔の悪魔による悪魔の為の悪魔的なボードゲームの世界へ

□ダイススロー 5回目
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"はぁ…"
ため息なのか深呼吸なのか、はたまたどちらでもあるのか。
ネロはダイスを一度強く握りしめ、重たい息を吐いた。

「振るぞ。」
「んなこといいからさっさとやれよ。」
「変な目がでませんように!」
「ネロ、頑張って。」

2回連続悪魔のゲームにしてはみ易い命令が続いた所為かすっかり元気を取り戻した3人は口ぐちにネロに言った。
が…、ネロは少し不安だった。

ディーヴァの言う『変な目』を出さないかと。

以前までは"ダンテ"という神はおろか悪魔にすらも見はなされた運気最低辺の男が側にいたからこそ、あまり注目されることも無かった。
しかし、彼はそれでもダンテのように見られていないだけで実は"自分も決して運に恵まれてはいない"と自覚していた。

自覚しているからこその不安。

そして今回、『運』悪くもこの不安が的中することとなる。
加えてこの『運』が一騒動起こすことになると知るや否や
ネロはやはり、自分の運の無さに嘆くことになるのである。


ゆっくりと放ったダイスは、二回三回とゴムボールのように飛び跳ねてボードの上を右往左往と転がりまわる。
そしてようやく止まり、現した数字は『1』。

「期待値以下、…かぁ。」
「なんだ?期待値って。」
「なんだって…あのね、ダンテ?
 前に数学の確率の勉強してた時に教えたでしょ!?」
「あ゛ーーー!
 期待値とか、確率とかうるせえよ!
 どーせ俺は運がねぇよ!」

もうどうにでもなれっ!
そう言わんばかりで自棄になったようにネロは、駒が吐き出した羊皮紙を少しだけ乱暴に逢夏に渡す。
受け取った逢夏はするするとそれを広げて読み上げた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

コノぅゲェムうおプぅーレィでぇきティるコぅ運なおマぃラへちょぅシェンじヨウ
4ヒぃキのぁクマとぅんダメし

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「このゲームをプレイ出来ている幸運なお前らへ挑戦状。
 4匹の悪魔と運だめし。」
「「「「運だめし?」」」

3人が声を揃えた途端。
ポンっ!とポップでケミカルな音を立てて、4枚のカードが天井から降ってくる。
ボードの前に整然と並んだカードにはそれぞれこうあった。

・ぃぃ〜ちぃブぅアんィいジぃなカンじィ
・ちょッとイタぃきャンずイ
・ルぅるムツカしなかんずィ
・もぅしかスゥ死ンじゃぅキャんぅじ

「……。」
「おい、なんて書いてあんだよ?」
「えっと…、とりあえずディーヴァちゃんはこれね?」

説明もしない逢夏は真っ先にディーヴァの手に『ぃぃ〜ちぃブぅアんィいジぃなカンじィ』と書かれたカードを渡す。
するとカードの端に少し歪なデフォルメされた顔のマークが記された。
要はもうこのカードの持ち主を交換できないという事なのだろうか?

「これ、あたし?」
「ひでぇな、ディーヴァはこれの100倍以上可愛いってのに。」
「だったら最初から比較すんなよ。」
「…悪魔って悪戯心はあっても絵心はないんだね。」

マークに対して文句を言っているとコマが低い声で呻く。
言っていることは分からないがどうやらさっさとしろと催促している様子。
というわけで…と逢夏が唐突に2人に向き直る。

「ネロとダンテって、丈夫なのはどっち?」
「「こっち」」

問いに寸分の差も無くお互い指差すネロとダンテ。
それにディーヴァと逢夏はため息をついた。

「「嘘つき。」」
「嘘じゃねぇ!
 大体、俺はクォーターなんだってのっ!
 ハーフのダンテと一緒にすんな!」
「クォーターつっても逢夏の顔見る限りそんな差はなさそうじゃねぇか!
 それにネロの方が魔人化?とかできんだろ!?
 だったらネロのが丈夫じゃねぇか!」

とかなんとか…。
聞き方が悪かったかと反省する逢夏とぽんぽんと背を撫で慰めるディーヴァを後目に
ダンテとネロは再びコマが激しく呻くまで言い合いを続けていた。
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