ようこそ、悪魔の悪魔による悪魔の為の悪魔的なボードゲームの世界へ

□ダイススロー 8回目
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朝になった。

ダンテのベッドとは大違いの、ふかふかの大きなベッドだったためか、気持ち良く眠ることは出来たが、そこはやはり人様のおうち。
ましてや夫婦の寝室だ。

ディーヴァは誰よりも早く目を覚ました。
隣に寝ている逢夏よりも早く、だ。
この分ではネロとダンテも起きていないかもしれない。

逢夏はすやすやと安らかな寝顔をこちらにさらしていた。

「起こさないようにしないとね」

そっと部屋を出て、洗面所を借り身支度を整えたディーヴァは単身、リビングに降りた。

リビングの暖炉の傍にはシャティの寝床になっているバスケットがある。
気配に鋭いシャティはディーヴァに気がついて声をかけた。

「ディーヴァ、早いではないか。
 寝心地でも悪かったか?」
「おはよう、シャティ。
 寝心地バツグンだったよ、でも起きちゃった」
「そうか。寒ければ暖炉に火をくべるといい」
「そうさせてもらうよ。
 皆が起きた時暖まってたほうがいいしね」


暖炉に火をつけていると、テーブルの上でガタガタと音がした。
ディーヴァはビクッと身構えてそちらを見る。

やはりボードゲームだった。

「安心しろ、奴はまだ傷心中だ」
「そ、そうなんだ…びっくりした」

コマの横にはまだ立て看板がおかれていて
プラス、悪魔の物と思われる嗚咽が小さく聞こえていた。

「一晩中ずっとこうだ。
 気になってあまり眠れん」
「じゃあバスケットごと移動する?」
「移動?どこにだ」
「キッチン。お世話になってるから朝御飯を作りたいの。
 …勝手にキッチン使っちゃまずいと思う?」
「別に構わんと思うぞ」
「よかった」

ディーヴァはバスケットを手にシャティと共に、キッチンに向かった。


* * *


ぱち。
逢夏がその瞳を開けた。

「なんか良い香りする」

これはベーコンエッグか何かかな?
スモークベーコンの焼けるこうばしい香りが下から漂う。

誰が朝食を作っているのだろうか。
時計を確認するとネロが起きる時間にはまだ早い。
ネロという線は薄いだろう。


寝ぼけ頭で考えてついに思い当たる。

「あ。
 昨日ディーヴァちゃんとダンテが来たんだ。
 そう言えば一緒に寝たんだったっけ」

だが、隣はもぬけの殻だ。
と、いうことはこの匂いはディーヴァによるものだろうと推測する。

逢夏は素早く身支度を整えると、部屋を出た。
出てすぐ、ゲストルームから物凄い音が響いてくる。

ドゴ!
「てめっ何しやがる!」
「ぎゃあ!…って気色悪っ!おぇぇ」
「そりゃこっちのセリフだ!」
バキッ!

そして一瞬のあと、2人が部屋から出てきた。
ダンテはネロによる物だろう、大きなたんこぶを2つ頭にくっつけている。
すぐ治るだろうからあえて気にしない。

「朝から賑やかだね、おはよう」

逢夏は朝一番の挨拶…キスをネロの頬や唇にしようとした。
ダンテがいるから恥ずかしくもあるが、毎日の恒例行事みたいな物なので癖になっているのだ。

まずは唇に口づけを落とし、次は左頬に口づけをしていく。
最後は右頬だ。

「はよ、逢夏。
 おっと、目覚めのキッスは右頬にはするなよ」
「なんで?」
「…こいつが俺をディーヴァと間違えてキスしやがった。
 あ゙ー、まだ鳥肌立ってやがる」
「悪かったっつったろ!
 オレだって野郎にキスしたとか気持ちわりぃよ!」

両者とも苦虫を噛み潰したような顔をしている。
そうとう嫌だったようだ。

「口じゃなくてよかったね」
「「言うな。オレ(俺)達も思ってることだから」」
「でもBLみたいで面白い」
「「BL?」」
「あ、気にしないで。こっちの話」


逢夏がクスクス笑うが、2人は意味がわからないといった表情だった。
わからないほうがいいこともある。

「で、オレの愛しのディーヴァは?」
「多分、下で朝ごはん作ってると思う」
「なるほど、これはお前じゃなくてディーヴァが朝食作ってる匂いだったのか」
「よっし!オレもお目覚めのキスしにいくぞ!!
 待ってろディーヴァ!」
「邪魔はしないであげてね」

ダンテが足早に階段を降りていく。
そのあとをネロと逢夏はゆっくりと続いていった。
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