ようこそ、悪魔の悪魔による悪魔の為の悪魔的なボードゲームの世界へ

□ダイススロー 9回目
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ほんの一時間前、動物の姿で暴れ回った所為か少しだけ荒れてしまったリビングをぐるりと眺め
拗ねるダンテをあやすディーヴァ、その二人を微笑ましいと言わんばかりに大人しく見守る逢夏を横目で確認し
ネロはボードゲームの盤上に転がったダイスを拾い上げた。

「今度こそ、イイ目が出るといいんだけどな。」

ポツリと呟いたのは前回を引き摺って、そして今までの目も諸々合わせてのそんな独り言。
否しかし、さっきもイイ目と云えばイイ目だったのかもしれない。
それはもちろん、最初の完全に獣化してしまった時ではなく…半獣化的な意味で。
とはいえ、悪い目だったと云えばそうとも言える。
あんな状況を目前にお預けくらわされたわけであるし…とネロはぐだぐだと頭の中でぼやきを連ねていた。

するとそこに

「おい、ネロ。
 次はまともなマス出せよな。
 特にさっきの続きみたいなヤツなら大歓迎だぜ。」
「ひゃぁ!!?………ダ・ン・テーっ!?
 ダンテが言えたことじゃないでしょ!
 もうっ、ご機嫌とりして損しちゃった!」

拗ねていたと思ったダンテが突然ニヤリと笑ってそう言ったかと思うと
抱きついてきていたディーヴァの体のラインをなぞるかのように手を滑らして抱きしめ返した。

その直後、再び「手付きがヤラシイ!」と頬を引っぱたく小気味のいい音がリビングに。

ネロからしてみれば、昨日ダンテが引き当てた"満員電車につっこまれる惨事"を鑑みるに『テメェが言うな』状態。
しかしそこに分け入ったディーヴァの平手。
一言二言言いたかったが、まぁ許してやるかの自称大人の精神で再びダイスに向き直った。

もう振っても良いだろう。
幸い、今は誰も心身にダメージは負っていない様だし。

一度ダイスを宙へと放り、右手でキャッチ。
気合いを入れたところでネロはキャァキャァワァワァと賑やかなダンテとディーヴァを見た。

「おい、そこの2人。
 イチャイチャしてんじゃねぇよ、ダイス振るからな。」
「イ、イチャイチャ!?
 そんな、イチャイチャなんてしませんよーだ!」
「えぇ?
 オレは誘われてるのかと思ったんだけど。」
「!?
 そんな訳ないでしょ、馬鹿ダンテ!」
「ケンカするほどっていうし、ほんと、仲が良くていいね。
 ネロ、私ともケンカしてみる?」
「絶対やだね。
 俺はケンカしてる時間すら惜しい位、お前を愛してるつもりなんだけど?」

やれやれと肩を竦め、ネロは握り直したダイスを今度こそボードの上へと放る。
コロコロと転がったダイスは悪魔のコマにぶつかると、コマの前でゆっくりと回転を止めた。
だとすれば、コマの目に逸早く気付いたのは悪魔。

『ニぃ!?
 2出シィたか!半端モノぅクせにィ、ヤァるなぁ!!』

「2を出したのか!半端者のくせにやるな。
 って言ってるよ。」
「さっきから半端者半端者うっせぇな…。」
「で?新しい命令ってなんなんだ?」
「悪魔さん、なんか嬉しそうだね。」

『オで!ぅれ死ぃ!
 次ぃノメェイれぃ、"ぃト休ミぃ"
 ぉデ、これから24時ィヵん休ぅ暇!
 ォまぃラも24ジ間、おやゥい!
 まタ明日、こォ時間ニ、ダィすスろー!
 だッテェ!ヨぃ子、げィムゎ、1日1ジィヵんまァでぃ!』

ウキウキと跳ね回るコマはこれからお出かけでも行ってきますと言わんばかりに帽子を被り、ポーチを下げて2マス先に止まる。
そうして、昨夜のように小さな破裂音が鳴ると同時にコマの横には立て看板。
それには

"マたァあィた"

と書かれていた。
そしてコマはうんともすんとも言わなくなってしまう。
きっとコマの中身の悪魔は何処かに行ってしまったのだろう…多分。

「…何故、土佐弁。」
「ト、サ…?なんだ、逢夏?」
「なんでもない!
 それより簡単に説明するとね、今回のマスは『ひとやすみ』。
 24時間自由時間ですよって言ってた。」
「わぁ!すっごくいいマス!」
「良いマスかぁ?
 余計な時間食ってるだけじゃねぇの?」
「まぁまぁダンテ。
 運の悪いネロにしては良くやったって妥協してあげて?」
「逢夏…?」

ゲームを再開して僅か2時間で手にいれた再びの自由時間。
これが果たしていいマスなのかそうでないのか戸惑う4人。
しかしすぐさま会話の内容は『どのように24時間過ごすか』に変わっていく。

「とりあえず…今は10時、か。
 昼飯の準備も早いしな…。」
「そうかぁ?オレはもう昼飯でもいいけど。
 なんかドッと腹減っちまった。」
「えぇ…?ダンテ、早くない?
 少しくらい遠慮してよ、もうっ。」
「まぁ、お腹なんていつか空いちゃうもんだし。
 とりあえず、…ねぇ、皆。」

相談の最中、そそくさと何処かから戻ってきた逢夏。
3人をぐるりと見回し、笑顔で言わずとも分かる話を切り出す。

「美味しいお昼が食べたいなら、掃除しようね。」

周りには何時の間に持ちこんだのか掃除機、はたき、ふきん。
ただ一人、嫌そうな顔をするダンテ以外は思い思いの掃除用品をとって掃除を開始するのだった。
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