白銀の想
□白銀の想 序
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耳を澄ませば、歌が聴こえた。
あなたを呼ぶ私の声を聞いて
あなたを暗闇の外から呼んでいる
その歌は響く度に私に途切れさせていた思考の糸を手繰らせて何度も一つ疑問に辿り着かせる。
"愛"とはなんですか?
と、不毛で一向に答えの見えない終わりのない疑問。
けれど、この疑問は好きだった。
永遠に続く眠りが約束され
封印によって作り出された緩やかに穏やかに過ぎる時間はまるで無限に見えるかのような
そんな中で生きる私にとって『答え』を導き出せない問題は重要だったから。
『答え』を導き出せる問題は『答え』を作らない様にするほど
意識のあるこの眠りはあまりに退屈で、かといって、目覚めることなど許されなかったから。
だけれど、唯一『答え』を出した疑問が一つだけ。
昔々、遠い昔。
眠りにつかされる前に押し付け突き付けられた
"このまま誰の記憶にも止められず、消えていくことが定め"
そんな私の運命。
幼い私は特に疑問にも思わないまま、首を縦に振って肯定した。
疑いも問いもしなかったのはそう教えてくれた父が、父が放った言葉が私の世界の掟だったから。
そしてたった一度も私を愛してくれなかった父の言葉が私にとって抗えず、厳守すべきもので有り続けるのは
私が父から唯一与えられたレインという名前によって縛られていたから。
だから
『どうして私はこの暗闇の中に一人なの?』
『それが私の運命だから。』
それだけが唯一私が出さなくてはいけなかった答えだった。