白銀の想

□白銀の想 3
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「すっ…ごーい!」

深いあの地下の広間から出てきたレインの第一声は快晴の空へ吸い込まれ
その声の様にすら歓声を上げると真っ青な空を見上げたまま両手を広げて楽しそうにくるくる回る。

つい先ほど前まではレインが意図せず作りだした空気の所為で曇り暗い雰囲気だった城の雪を被った白い瓦礫の山は
嘘のように晴れ渡る空から降り注ぐ眩しい光を反射させてキラキラと輝いていた。

そうだ、この雪の所為だ。
今浮かびそうになる涙は雪の反射する光が何だかんだと薄暗闇から出てきたばかりの目には眩しすぎるだけなのだ。
混乱する頭の中で何度もそれを呟きながら額に手を当て繰り返し頷くネロ。

そんな悩める青年を己の楽しみのためだけにどん底に突き落とそうとするのが

「良い体験だったな、坊や。
 そんじょそこらじゃ、なかなかできないだろ?」

にやにや笑いながら悩みに丸められたネロの背を叩くダンテ。

そのダンテにネロが勢いよく向けた視線は"言い触らした時は半殺す"とでも言いたげなものなのだが
今の自分がそんなことを言っても説得力は欠片も無いと今さら気付いたのかがくりと肩を落とし、
未だくるくると回り、空に溢れんばかりの笑顔を向け続けるレインを見た。


さて、ようやく外に出てきたというのにこんなにもレインと俺に落差があるのかと言えばそれもこれも全て
俺達が彼女に会うために落ちた、あの『直角』に掘られた穴が原因だったりする。
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