白銀の想
□白銀の想 5
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けほけほと後ろからは咳き込む音。
まぁこんなところにくればそうなるのも必然だろうとネロはすぐさま部屋からレインを遠ざけた。
好きな部屋を使えと言われ、とりあえず目についた扉を開けてみると部屋の隅には蜘蛛の巣が張り
家具と呼べる家具は何年も使われていないであろう埃をかぶったベットと蝶つがいがおかしくなって開かないクローゼット
…という見るも無残な状態。
そんな惨状を目の当たりにしていると
「明日、掃除しなきゃね。」
ネロの背から覗き込むように部屋を見つめるレインの提案通り。
今日は時間も遅いため掃除は明日にするしかないのだがここで一つ問題が発生していた。
「どこで寝ればいいんだ?」
日はとうに暮れ、大分冷え込んできている。
俺は下のソファにでも寝ればいいだろうが、レインにそんなことをさせてしまえばきっとこの寒さで凍えるのは目に見えたことだった。
というのもフォルトゥナよりも比較的温暖なはずのここは
その昼間に吸収した温かさなど夜が訪れた瞬間に全て発散してしまうコンクリートに囲まれた街。
下手をすれば夜は昨日の肌寒さよりも冷えそうだと
漠然とした確信を得ながらがしがしと頭を掻き困っていると下階からダンテがレインを呼ぶ声が。
その声にとりあえず部屋の隅の埃を軽く払い持ってきた荷物を置いてレインを押しながら下に降りると
「やっぱり使える状況じゃなかったろ?」
一緒に降りてきた俺の顔を見るなりそう笑うダンテ。
「別に、あれくらいなら掃除して使えるようにすればいい。
それまでは俺は寝るのもソファでいいし、・・・それより問題なのはレインのことだ。」
少しでも温かくしておかないと風邪をひくと付け加えると少し考えた風をとったダンテだったが
すると突然良いことでも思いついたと言うような手を叩く音が響いた。
「レイン。"お兄ちゃん"と一緒に寝るか?」
「おにいちゃんといっしょ…?ほんとに!?」
突然の提案、それにも拘らず目を輝かせたレインはダンテに抱きつき何度も頷き
対してネロはネロで呆気からはたと我に返りダンテからレインを引きはがす。
「やめとけ、レイン!何されるかわからねーぞ。」
にやにやと笑うダンテを指差し、必死に身の危険を教え込んで絶対にダメだとそう言い募るが
「?。…何をするの?」
ネロの言わんとすることを全く分かっていない様子でその後も切々と語られ、反対されるがやはりさっぱりと理解できていない様子を見せた。
そんなどうしても幼気なレインに頭を悩ますネロのと思考の片隅に一条の金色の光がちらつく。
「トリッシュ・・・!トリッシュと寝ればいいだろ!」
思いついたなかなかの解決案にネロは声を張り上げる・・・が
「トリッシュは今晩することがあって出かけてくるんだって。さっきばいばいって言ってたよ?
あ、後ね。トリッシュがネロに"がんばりなさい。"だって。」
レインより伝えられた伝言に最後の砦を失い
結局そのまま覆らず、レインはダンテと寝ることになった。
因みにここまでネロが気にするのは彼女の寝るときの服装にある。
普段の外出用の服はいくつかキリエに譲ってもらえたものの、流石に寝るときなどの服はなかったこと。
そしてなにより彼女には下着の類が無いこと。
と、実際あるにはあるが、現在彼女が着ている物しかないというどうしようもない事態が発生していたりするためである。
因みについでにネロが何故こんなにも知っているのかというと
"注意してあげてね"とキリエにそう言われていたからであり、この青年には何の罪もないと諸々の疑惑は今のうちに払拭しておこう。