白銀の想
□白銀の想 11
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聞かなければよかった。
ずっと耳を塞いでいればよかった。
知らなければよかったと思うなんて初めてだった。
でもこれはきっと、知らないままでは済まされなかったこと。
いつかは知って…、いつかは…
いつかはこの幸せを手放さなければいけなくなる。
だから声が言ってたんだ。
『それ』に気付いてはいけないって。
『それ』と別れるときはとても辛いから。
辛くて辛くて、きっとそのまま私自身が壊れてしまうから。
もしかしたら…
一生別たれてしまうくらいならと私が全て壊してしまうかもしれないから。
誰かに相談…なんてできない。
これを話せば…、きっと皆は私から離れていくはず。
みんな、みんな。
いなくなる。
ようやく私は独りでなくなったのに…。
せっかく手にいれた幸せなんだもの
まだ離れたくないと思う事は変、じゃないよね?
まだ皆と一緒にいたいと思う事は…おかしくないよね?
離れたくない、まだ一緒にいたい…。
だから私は今からたくさん、たくさん嘘をつく。
私はまだこの幸せの中に居たいから。
でも、不安なの。
嘘を吐くことが平気になってしまったなら、私はもう戻れない。
心まで満たされた嘘を吐き始めたら、私は私に戻れない。
仮初の幸せすら、得られなくなるって。