白銀の想

□白銀の想 12
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深夜、人の姿が見えない森の拓けた場所。
金属と金属が激しくぶつかり合う音が響く。


「ネロ!もう一回!」
「わかってるって!」


音の元はこの二人。
一人はレイン。もう一人はネロ。
彼女は圧倒的ともいえる強さでネロの前に立ちはだかる。
その二人を遠くから見守るバージルとトリッシュ。
そして、何故か項垂れるダンテ。
項垂れているダンテの手からはリベリオンは無い。
そのリベリオンは今、レインの手にある。


「見事の一言ね。ネロと同じ魔力しか解放してないのに
 あんなに簡単にリベリオンを扱うなんて。」
「元々の素質が違うのだろうな…。…ダンテあまり気にするな。」
「うるせぇ。」


珍しくダンテに同情するバージル。
あれでは余りに可哀想だと思うのは当たり前だろう。

それはつい数分前のこと。
魔界のことも気になり、一番危ないネロの特訓を行うことになった今日の夜。
一番最初は長剣同士の方がやりやすいだろうとダンテがネロの相手を買って出たのだが、
自分がやるとレインが言って聞かなかった。
彼女の力は十分知っているものの、一応兄という立場なので、
ここで簡単に折れるわけにもいかず、ダンテは少し卑怯な手を使うことにした。


『ネロの持つ魔力の量の力の解放、ネロの装備で俺と戦ってみろ。』


という提案。
バージルもトリッシュも大人げない。と思ったが、レインはそれに乗ってきた。

ダンテには勝算があった。
まずは長剣をレインは扱ったことが無い。それと同じく銃も扱ったことが無い。
しかも剣、銃ともにそこらへんにある普通のものではない。
いくら彼女が知識を持っていたとしても、体得するには少し時間がかかる。
次にネロの装備は魔具ではないので、それの力を引き出す。といった彼女の得意分野は使えない。
最後に元々の力、魔力ではなく腕力の方の違い。
これらをひっくるめ、ダンテには絶対的な勝算があったはず…。だったのだが。


「負けた…。妹に負けた。」
「だから気にするなと言っている。」
「そうよ。あれは仕方ないわ。」


彼女の学習スピードをなめてかかったのが敗因だった。
腕力はレッドクイーンの推進剤噴射機構で補い、
銃もリロードが初心者には難しいのを知ってか最後まで使おうとしなかった。
最後の最後、楽しそうに笑みを浮かべ、愛らしい声で発せられた『Bang!』という言葉が頭をよぎる。
もしあの時、すぐにでもレインがネロに向き直り、特訓を始めようかと提案しなければ、
ファルトゥナでの封印の間の脱出時の仕返しとばかりにネロにからかわれたに違いない。


落ち込むダンテを横目に、バージルは他のことを考えていた。
何故こんなにもレインは焦っているのだと。
彼女の中で何か予感があるのか、
レインはネロに対して急激な成長も今、求めようとしている。
ダンテとのこともそうだ。
一見楽しそうにしているようで、真剣そのもの。絶対に負けないと気迫が語っていた。


「何をあの子は焦ってるのかしら。」
「分からん。ただ、このままではネロが危ないと
 そういった予感でもあるのかも知れないな。」
「…結局あの子の自分だけで問題を抱え込むところは変わらないのね。
 今回は自分だけではどうにもならないから、自分でネロをって思ってるのかも。」
「かもな。」


今もネロに息をつかせる間もなく、特訓を続けさせるレイン。
一本とっては、また剣を握らせ。
戦いながら様々なネロの弱点をついていく。
ついて一本とれば、またそこの弱点を補う方法を的確に教えながら、また弱点をつく。
長剣一本で戦法をがらりと変え、いろんな状況に対応させようとする。

そこまでして、ネロに何をさせようというのか。
彼女は全くに真意を見せることをしない。
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