白銀の想

□白銀の想 13
1ページ/6ページ

目の前に広がるのは自然が作り出した白の世界。
寒いというのにレインはそれに飛び込んでいく。


「真っ白!これが雪?!」
「そー。寒いから早く戻ろうぜ。
 お前もようやく風邪治ったばっかしだしさ。」
「温かくしてきたから大丈夫!…えいっ!」
「つめたっ!なにすんだよ!」


そう言いながら雪玉を投げ返すネロ。
それを身軽にかわすとレインはもう一回雪玉を投げる。
元々白い肌に、銀の髪、そして何より上から下まで白尽くめのもこもことした服に
身を包むレインにこの見渡す限りの銀世界で雪玉を当てるのは結構難しい。
たぶん、彼女がこの何処かで倒れていたら
気付かずに踏んでしまうかもしれないほど世界に同化してしまっている格好。


「お前、卑怯だって。その格好。」
「だってこれ着てなら遊んでいいって、トリッシュがいうんだもの。」


悪戯っぽく笑いながら雪に触れ冷たくなった白い手袋に包まれた手をネロの頬に当てる。


「だから、つめたいって!」


仕返しとばかりにネロもレインの頬に手を当てるとひゃぁっと面白い声をあげて驚く。


「元気だなぁ…。」
「そうねー。」
「レイン、そんなことをしていたら風邪がぶり返すぞ。」
「大丈夫ー!」


ついていけないと二人を見つめるダンテとトリッシュ。
せっかく風邪が治ったレインを心配するバージル。

それを知ってか知らずか、
その後もひたすら二人で雪玉を投げ合っていたが
その時、ダンテとバージルの顔に目掛けて2つ同時に雪玉が投げられる。
ぼーっとしていたダンテはもろに直撃、
なんとなく察していたバージルは当たる前にたたき落とした。


「俺の勝ち!」
「負けちゃった。」


そう遠くで話すレインとネロ。


「お前ら…なにしてるんだ?」
「雪合戦しよー。って誘ってるの!」
「おっさん達対俺達な。」
「絶対に負けないんだから!」


それを聞き、雪を払い落すダンテはぶつけられた仕返しをしようと立ち上がり、
バージルも負けず嫌いの血が騒ぐのかやってやろうと少し怖い笑みを浮かべる。


「トリッシュは審判!」
「はいはい。ちゃんと当たった数をカウントしてあげる。」


レインに審判を任されたトリッシュは
10分3セットくらいかしらねー。と試合ルールを勝手に決めるとダンテが座り込んでいた場所に座る。


「それじゃあ…始め。」


その声を合図に、雪合戦が始まった。
結局、合計30分では足りず、一時間はこのまま雪の中。


----------------------------------------


「俺達に勝とうなんて百年早い。」
「負けたレインとネロには、食材の買い出しでも頼もうか。」
「こういうのを大人げないって言うんだよ!」
「二人対二人なら普通平等にどっちにも投げてくるもんだろ!」


口ぐちに言う二人の言葉には聞く耳持たないといった体で笑みをもらしながら明後日の方向を向く双子。

大人げない、平等じゃないと言っているのは、勝った双子のやり方だったりする。
妹に雪玉をぶつける気が毛頭ない双子は、ネロばかり狙っていたのだ。
避けるのに精いっぱいのネロの代わりに雪玉を投げれるのはレインは一人。
その彼女にも投げようとしたときにそのタイミングを外すように近くに雪玉が投げられるので大抵不発におわる。


「これも作戦のうち。こういうものはもう少し考えてやるものだ。」


勝ち誇った笑みを浮かべるバージル。大分気が済んだようだ。
レインの頬を冷えた手で引っ張るダンテも随分満足げ。


「次は勝つんだから。ね!ネロ。」
「決まってるだろ!」
「…まぁ、今日はもう終いだな。今度は坊やが風邪ひくぞ。」


ダンテがそう言うと、審判をしていたトリッシュはいつの間にか持ってきていたタオルをネロに投げる。
二人がかりで雪玉を投げられたネロはびしょびしょ。
受け取ったタオルでとりあえず髪を拭く。


「少しくらい、『年長者』の余裕で手加減くらいしたっていいだろ…。」
「こーいうのは本気で遊んだほうが面白いんだって。」
「…まぁな。」
「すっごく面白かった!」


そうして顔を見合わせて笑うネロとレイン。
それで他の3人もつられて笑う雪の日の朝。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ