白銀の想

□白銀の想 16
1ページ/5ページ

もうそろそろだと事務所に帰りドアを開けると、
いつもダンテが足を乗せているデスクの上で烏が既に待っていた。

ふと気になったのは、珍しく鍵をかけたドアに鍵をかけた窓。
どうやって入ったのだろうかとネロは疑問に思う。


「お前…どこから入ったんだよ。」
「そちらが私を一度ここへ招いた。
 悪魔は招かれた家に入ることに造作もないということをしらんのか?鍵など無意味。」
「あー、そうかよ。」


その問答に興味のない他の3人は武器を構えることなく、好きなとこに腰掛け烏を見据える。


「で、坊やとそんな話するためにきたんじゃないんだろ?」
「あぁ、昨日の問いの答えを聞きに来た。行くのか、行かないのか。どちらだ。」
「行くに決まってるだろ。」


そう答えたネロを烏は見つめる。
それから視線を外し、他の者も一人一人見、口を開く。


「他の者も相違ないようだな。」
「あぁ、そうだ。」


ならばと烏は安心したように薄く笑う。


「2週間ほど、毎晩こちらに出向かせていただこう。」
「はぁ?」
「人間界にいる悪魔と今の魔界の悪魔を一緒にするなよ、小僧。
 それ以外にもお前は魔力に弱すぎるのだ。私直々に稽古をつけてやろう。」


偉そうにと思ったが口にはしなかった。
トリッシュはそっちの方がいいわねー。
と最近聞かなかった間延びした声でそれに賛同し、それに双子も首を縦に振る。


「まてよ。お前、レインの使い魔なんだろ?近くに居なくていいのかよ。」
「大丈夫だ。レイン様は現在、他の側近と王として
 責務を全うされていらっしゃる。当分は呼ばれる事はない。」
「その責務って?」
「口止めはされていないが、きっとあの方は知られたくないと思われるだろう、言わぬ。」
「…分かったよ。俺は黙ってお前と特訓すりゃいんだろ?」
「そう言うことだ。」


では明日の夜また来る。とその姿を消そうとした際にふと思い出したように烏は止まる。
嘴で首元少し探るようにすると羽に隠れていたペンダントが出てきた。

一瞬逡巡するような素振りを見せるがちょんちょんとネロの足元に跳んでくると
取れ、というように頭を上げ、ペンダントを見せる。
右手でとろうとすると鋭い嘴でつつかれたので左手で取り直した。
ペンダントにつけられているのは青、赤、緑、オレンジが美しく混じる大きなブラックオパール。


「なんだよ。これ。」
「レイン様が私への守護として授けられたものだ。決して粗雑な扱いをするな。」
「…で、何に使うんだよ。」
「使わなくていい。ただそれを持っていろ。
 絶対に右手で持たず、決して身から外すな。」


そう言うと、ネロの持つペンダントを名残惜しそうに見つめ今度こそ姿を消した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ