籠越しから見る空
□籠越しから見る空 7
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できる事なら手で目を覆いたいほど眩しい笑顔が続く中、
必死にそれを耐えてるといきなり私の両手はキリエさんの両手に包まれた。
「手紙の通り!」
「手紙?」
「そう!ネロはね、月に最低二回は必ず手紙をくれるの。その手紙に…。」
「キリエ!」
手紙の内容を言おうとしたキリエの言葉を遮る様にネロが大声を出す。
顔を真っ赤にして『言うな。』と何度も繰り返すネロに
なんで?と頭にはてなマークを浮かべるキリエさんは天然さんでかわいいなぁ。なんて思ってたけど…。
「ダメ?変なことは一つも書いてないでしょう?」
「それでもだ!普通手紙の内容はいわないもんだろ。」
その言葉に可愛らしく微笑みながら首を傾げるキリエさんは明らかに確信犯。
それくらい私にだって分かる。
天然なのか計算なのか……不思議な人だと二人の会話を間で聞いていると少しして
「相変わらず恥ずかしがり屋なのね。」
「ちがっ!…う。」
ネロは諦めた様に大きくため息をつきそれ以上何も言わなくなった。
さすがお姉さん的存在、あのネロが普段よりも大人しい…。
そう変な所に感動している逢夏にキリエはまたあの眩しい笑顔を向けた。
「3日間よろしくね。」
「あ…はい、宜しくお願いします。」
とてもいい人なんだけれど、私はこの3日間でその笑顔に何回眩暈を起こしそうになればいいのか
それが気になって仕方ないと思っているとそれじゃあ…とキリエさんは今度はダンテやトリッシュに挨拶に行った。
その間に3日間一緒に部屋を使う事になった私は私のやるべき事。
いろいろとある準備の続きがあるからと部屋に戻るとキリエさんの荷物を運んでいたネロがいた。
そんなネロは私に気づいてばつの悪そうな顔を浮かべる。
「何かあったの?」
「いや…いきなりで悪いな…とか思ってるだけだ。」
いきなりでも何でも無いと思っている逢夏に対し、
本当に悪いと思っているのか、ネロはかけようとしていたシーツとろうと手を伸ばすがそれを逢夏が阻止した。
「私がする!ネロはキリエさんと一緒にいてて。」
「やることならたくさんあるだろ、だったら手伝いくらい…。」
「いーから!せっかく遠いところから来てくれたんでしょ?」
大切な、好きな人なんでしょ?とまた本気半分冗談半分で言うと
何かを押し殺し傷ついた様な表情を浮かべたネロはそれを消しすぐに呆れ気味な表情になる。
「お前…まだそれ言ってんのか。言ったろ?キリエは俺にとって…。」
「『姉』みたいな存在でしょう?
逢夏、…って呼んでいいかしら?私もネロの事は弟の様に思ってるの。」
ネロの言葉を横からさらっていったのはいつの間にかドアの所にはキリエさん。
にこーっとあの優しい笑みを浮かべたまま姿勢正しくそこにいた。
その笑みのままネロの服を小さくひく。
「ちょっとお話があるの、いい?」
「あ…あぁ。」
「逢夏、ネロを借りるね。」
「はい、どう…ぞ?」
私に聞かなくても…と疑問に思いつつ、すぐに帰ってくるからと
そう言うキリエにネロが引き摺られ連れて行かれる様を見る逢夏。
二人の姿が見えなくなってようやく置かれた荷物の移動などに取り掛かる。
手を動かししつつ…話が出来る人がいるというのは…とてもいいなぁって思ってた。
幼馴染というか好きというかそういう近しい間柄の人がいて、
何でも話が出来るというのはとても大切なことで…『失って初めて知る』とよく言われる言葉が重く感じた。
…その所為なのか胸が酷く痛い。
にゃーん
とそこにやってきたのは『ネロ』。
「キリエさんは『ネロ』のことも気にいってくれるかな?」
「うー?」
変な声を上げて首を傾げる唯一同じ世界から来た私にとって大切な存在。
人間ではないけれど…お話もできないけれど…
大切な、本当に大切な私の心の支え。
改めてその存在の大きさが心に響いた気がして、その白い体を少し力を込めて抱きしめてみた。
「ねぇ…なんでこんなに苦しいんだろうね。…なんで…私、泣いてるんだろうね。」
普段なら抱きしめられるのを嫌がるのに、今日だけは暴れる事もせず、
流す涙がかかっても『ネロ』はその温かい身を預けてくれた。