籠越しから見る空

□籠越しから見る空 9
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目を半眼にしたネロが睨む先には、逢夏をまるでぬいぐるみかの様に抱き寄せるダンテ。
最初こそ暴れに暴れ、そこから逃げようとした逢夏もやんわりと抑えつけられる事が30分と続けば、
「もうどうにでもして。」の諦めの体で大人しくしていた。
それに機嫌をよくしてますますダンテは抱く力を徐々に強めている中
絞め殺されるんじゃないだろうか…と不安になりながら視線をあらぬ方向に向ける逢夏を見てネロはため息をつく。

「逢夏にくっつきすぎだ、離れろよ。」
「なんで俺が坊やの言う事を聞かないといけないんだ?大体逢夏も嫌だって言ってないだろ。」
「さっきまで散々言ってたろ!それでもおっさんが離さないから諦めてるだけなんだって!」

不機嫌さをそのまま声に乗せて大声で反論するネロを軽くあしらい始めるダンテは最近誰が見てもおかしかった。
今の様に事あるごとに逢夏を膝の上に乗せてはその頭を撫でまわしたり、肩に頭を預けて抱きしめ続けたり…。
そんなダンテにどう対応していいのか分からない逢夏は暴れ疲れ果て諦めてじっとしている事が常となっていた。

ネロとしては面白くなかった。
それはもう面白くない。
助けようとするものの、手を伸ばせば奪われまいと背を向けられ、そっちに回ってもう一度手を伸ばせばしつこいと手を叩かれる。
いい加減にしろと怒るネロをダンテはまたからかい遊ぶ。

まるでおもちゃを取り合う子供だ。と黙って見ていたレディもトリッシュもあきれ果てていた頃だった。
今日もそんな我慢の限界が迫るネロを楽しむかのようにダンテは更に行動をエスカレートさせていく。

「逢夏…。」
「うひゃぁ!」

させるがままにダンテの膝の上でじっとしていた逢夏は突如耳元で囁かれたことに驚き
甲高く短い悲鳴を上げると再びばたばたと暴れ始めたと思いきや大きく一度跳ね、凍りついた様に止まった体。
その原因は押さえつけるダンテの手。
その行き場は逢夏の胸で…。

…なんかね、置かれるだけならまだしも揉んでる気がするんだ…。
冗談だよね?いや、冗談にしては過ぎるよね?
ゆっくり、ぎこちなく真横にある顔を見れば「どうした?」と言わんばかりのとびきりの笑顔。

「いやぁーーー!ダンテ、離して!!離してーーー!」
「あー、暴れるなよ。痛いいたい…叩くなって。」

嫌、嫌と首を振って再び反抗を始めた逢夏に苦笑しながらダンテがあやす様に頭を撫でている時だった。

「いい加減にしろ…。」

地を這うような、低い声が部屋に響く。

そこまで大きい声ではないのに、その声で言葉が紡がれた瞬間そこは静まりかえり、声の主を4人は一斉に見た。

「どーした、坊や?」
「どーした?じゃねーよ。…いい加減にしろって言ってんだ、逢夏を離せ。」

早く離せ。そう言って既に限界を突破してしまった怒りについにブルーローズを取り出したネロにダンテは笑みを止めない。

「んな物騒なもん、逢夏に見せるなってレディに言ったのはどこのどいつだ?」
「俺だ。だけどな、今は事情が違う。」
「そーか。それでまぁ…取り出したところでどうするんだ?」

撃っても死なない…が、逢夏の前では撃てないだろ?と余裕のダンテは怒るネロの前で銃に怯える逢夏に頬を寄せた。

「ほら、震えてる。坊やの所為だぞ、どうするんだ。」
「ダンテ、貴方本当にいい加減にしなさ…」
「表に出ろ。」

レディが流石に不味いと止めに入ろうとした時にはブルーローズを収めたネロは壁に立てかけてあったリベリオンを放る。

「お?やるのか?」

その喧嘩買ってやる。面白そうに呟くとようやく逢夏を離し、放られたそれを受け止めたダンテは先に外へと出ていく。
それを確かめたネロはレッドクイーンをとり、同じく外に出ようとするとその腕を解放された逢夏が引っ張った。

「待って!喧嘩はやだよ、止めようよ!」
「喧嘩じゃないって。平気だ、どっちも大した怪我なんてしねーよ。」

でも…。
言い募ろうとする逢夏の口元に人差し指を立て制止すると
『俺があの悪魔から守ってやるから、安心してろ。』
そう言ってネロは外に出ていった。
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