ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□引越しと入学式
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朝からばたばたと隣が喧しい。
引っ越し作業中なんだから、仕方ないと言ってしまえば仕方ないんだけど…。
もう少し、こうね。周りの家の事も考えろって言うんだ。
…まぁ周りの家はウチしかないんだけど。

シャーっと音を立ててカーテンを開くと何も取り付けられていなかったはずの隣の家の窓にはいつの間にかカーテンがひかれていた。
灰色のそれは少し分厚そうで簡単に光を通さない様な少し暗い感じ…。

「あそこの部屋…女の子が使う部屋ならいいなぁ…。」

同姓ならまだ許容できるけど流石に異性にプライベートを覗かれ易くなるのは嫌だものね。
頭の中で独り言を言いながら窓から思いっきり身を乗り出すとやっぱりの引越トラック。
何人もの人がたくさんの段ボールや家具を運び入れていた。

多分昨夜のうちに家に入ったのは引っ越し準備の為かとぼんやり思いながら窓を閉め、カーテンをひく。
今日はスーツを取りに少し出かけないといけないんだから、とにかくいつまでもパジャマのままではいられないのでまずは着替え。
その途中に見た時計の針は既にお昼の時刻を差し始めていた。
休みだからと寝過ぎたかもしれない…。明日から学校なのに。

「さっさとスーツ取りに行かないと。」

着替えを済ませて、ダイニングに行くと私用に準備された朝ごはんだったものが置いてあったのでパンだけ貰い、
食べつつ髪を調え、食べ終わったら歯磨きと顔を洗って、がっつりする必要はないのでほんのりメイクもできたところで。
さて!準備も整ったし出るかな!?
と出かける意思をかたーーーくしていたところに…水をさされた。

「柚々子ー!こっちにいらっしゃい!」
「えー!?何?私忙しいんだけど!」
「いーから!」

聞こえた母の声は玄関先から。
どうせ出かけるには通る場所なんだから…忙しいも何もないかと面倒くささを抑えて小走りで行く。
開けられたままの玄関の戸。
差し込む太陽の光がまぶしくて…ん?この眩しさ昨日の夜にも見た気が…。

「げっ…。」
「こらっ!失礼でしょ!…すみません、人見知りが激しい娘なもので。」
「いえ、こちらも突然でしたから。お気になさらず。」

よく見れば夜に見た銀髪の人達はまた違う銀髪の人だった。
その隣には金髪の綺麗な女性が私に向かって微笑んでいて、その後ろには…あの外車から降りて来た3人がいた。
うーん、それにしても出来た人だ。
失礼な初対面に対して笑顔とか…しかも気にするなって…。ん?

「あれ?日本語?」
「柚々子!さっきから失礼にもほどが…!?本当にすみませんね。ほらっ、柚々子も謝る!」
「だって!だって!…えと、あの…すみません!」
「本当にお気になさらないで。驚かせてしまったのですもの…こちらこそ、ごめんなさいね。」

はぅ…!?なんかこの奥さますっごい素敵な声してるんですけど!?
あわあわと茫然としているところに母に肘で横腹をつかれた。
口パクは自己紹介!と宣う。

「あぁ!えっと、小森柚々子と言います!よろしくお願いします。」
「よろしく。失礼だが、柚々子さんと名前でお呼びしてもいいかな?どうも名字で呼んだり呼ばれたりするのは慣れなくてね。」
「どうぞどうぞ!」

わぁ、気が動転しててあんまり意識してなかったけど、多分金髪の女性の旦那さんと思われるこの人もすっごくいい人そうだ!
なんてじーっと見ていると、思い出したようにその人の手はその人自身をさした。

「それじゃあ柚々子さんにもこちらの自己紹介もしよう。私はスパーダ、こっちは妻のエヴァ。」
「スパーダさん!に…エヴァさん!」

うん、すぐ覚えた!
いい人の覚えはいいんだよ!私ってば!
名前を反芻してるとすっごくにこやかなエヴァさんは軽く会釈してくれたので会釈でかえして…。
そしてスパーダさんは後ろの3人を見た。
視線の先には30代前半くらいの二人の男性と20代に片足いれた様な男性。
やっぱりそうだ、昨日車から降りてきた人達。
息子さん…かな?…ん?
じゃあスパーダさんとエヴァさんは何歳!?

「こっちが双子で兄のバージル、弟のダンテ。最後に末のネロ。」
「よ。よろしくお願いします。」
「あぁ、宜しく。」
「よろしくな、柚々子ちゃん。」
「…。」

バージルさん、ダンテさんときて…あれ、なんか末っ子さんの様子がおかしい。
…私すっごく見られてるし。
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