ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□通学と交通機関
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詳しく話を聞くと、バージルさんとダンテさんは大学に車で通勤するんだけどネロは公共交通機関を使って通学するんだそうな。
でも、ごちゃごちゃとしていて凄く分かり辛いから…

「私が案内すればいいんですね?」
「そーいうことだ。」

頼むな。って言ってくれるダンテさん。この人は本当にいっつもニコニコ。それに比べて…

「こういうのは一番教えてもらわなきゃいけないネロが言うべきでしょ!」
「俺は案内なんていらないって言ったんだ!なのに兄貴たちが無理やり…。」
「それでも!ほら、何か言う事ない?」
「ちっ…。分かった、言えばいいんだろ?…お願いしますー、大学まで連れて行って下さいー。」

舌打ちされた!?しかもすっごい腹の立つ言い方!とバージルさんが余り気にするなと私の肩を叩く。
そこで耳打ちされたのだけれど、挨拶の時には私にあんなことを言ったネロ…実は低血圧でかなり朝に弱いのだとか。
それなのに今日は無理やり叩き起こされて朝から果てしなく機嫌が悪いらしい。

「まぁ…そう言う事なら…。」
「すまないな。」
「お兄さん達も苦労しますね。」
「そう言ってくれたのは柚々子が初めてだ。」

苦笑いの双子のお兄さんたちを見つつ、まずはバス停まですたすた歩く。
この団地から学校までの行き方はこうだ。
駅までバイクもしくは自転車、またはバスで行く。電車を40分くらい最寄りの駅まで乗った後そこから大学前までいくバスに乗る。
片道所要時間約一時間半の結構な長旅なんだ、これが。
バス停に着くと同時にグッドタイミングでやってきたバスに乗車。
海外と日本のバス仕様の違いを軽ーく説明しながらネロには他に教えないといけない事を付け加える。

「バスで通る道が一番駅に近い道だよ。ちゃんと覚えててね。」
「分かった…。なぁ、柚々子は毎日駅までバスなのか?」
「そんなお金はないから私は自転車。原付でも良いとは思うんだけど、危ないからダメだって親が許してくれないの。」
「ふーん。」

そう言うネロは何で行くつもりなのかと聞いてみると、それならバイクで行くとの即答。
うーん。バイクの話、すっごく興味あるんだけど、それよりもっと気になる事が一つあるんだよね。

「なんでお二人まで付いてくるんですか?」
「何かネロと柚々子だけっていうのは心配でな。」
「心配する事なんて何もないだろ。」
「というのは建前だ。…ここは雪が良く降っては高速が封鎖する事があると聞く。
 その時はこうやって電車やバスを使うつもりだからな、覚えておいて損ではないのだろう?」
「すごい。そこまでよく御存じですね。」

ここに長く住む私にも納得の至極真面目なバージルさんの解答。
それの所為なのか文句が言えなくなったネロは窓から外をじーっと見つめていた。
あの果てしなく機嫌の悪そうな感じは更に増して気がするけど…大丈夫なのかなぁ?

とかね心配している間に。さて、やってきましたよ。駅。

「そうだ、ネロ。月曜日は私と一緒に帰ろうね。」
「は!?なんでだよ!」
「だって…定期の買い方分かる?」

学校から通学証明書を発行してもらってそれを窓口に提出する前に色々と
…と説明すればネロは大人しく頷き始めるから偉い偉い。って褒めてあげると怒られた。
とりあえず今日は切符。
人数分まとめて買った方が楽だから私一人で行くことにして3人には待ってもらうことにした。

そんな柚々子を後目に3兄弟はぼそぼそと会話を始める。

「何でついてくんだよ!あんな尤もらしい嘘つきやがって!
 どうせ車でいけそうにないって判断したら前日に研究室で泊るつもりだったんだろ!」
「いいじゃねぇか。お前だけ美味しい思いさせるのが気に食わないだけなんだからな。
 …それにしてもなんだ?ネロ"さん"、"君"からいきなり呼び捨て、しかも敬語無しってどういう事だ!?」
「年が近いんだから当たり前だろ!ただ単純に俺の方が馴染み易かっただけだ。」
「そうだな。お前は学生、俺達は教師。馴染み易さも会える時間も圧倒的にお前の方が有利だ。」
「それが分かってんなら…!」
「だからこそ、こういう時を利用しない手は俺達にないということくらい予想はついていたんじゃないか?」
「はっ!んなことしても無駄だぞ。柚々子の眼中に兄貴たちはいねーんだからな!」
「そんなこと分からないだろ?年上好きだったらどーすんだ?」
「ないな!柚々子みたいなのは絶対同い年好きだ!」
「何を根拠に言っているんだか。」

…そこの3人は一体何を話しているんだろうかと不思議に思う事数秒。
結構刺々しい感じがあるんだけど、これって話しかけていいのかな?いやー…なんかいけない気がするんだよね。
…とか思ってる時に!?

「皆これ!はい!もったら走る!」
「「「は?」」」
「電車きちゃったよー!!」

とにかく切符渡して残った一枚を改札に通して先を走る。
階段を駆け上がって駆け降りて、駆け込み乗車になる前にドアの前につけたけどさぁ!
人がぜーぜー息を切らしてるってのにこの人らは!

「何でお兄さん達とネロは平然としてるの!?」
「俺達はまだそこまでおじさんってわけじゃないってことだ。」
「すっげー…時間が丁度だな。」
「ここまできっかりだと出る時間も決めやすくて助かりそうだ。」

ほんっとうに我が道を行くマイペースな3兄弟だ。
ねぇ、ねぇ…特に上の二人はこれで大学の先生なんだよ?…大丈夫なんだろうかって果てしなく不安な私の気持ち…誰か分かる?
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