ケが恋しくも、過ごすはハレの日々

□暗闇と誰か
2ページ/7ページ


「ダメだよ、やめときなって。」
「そんなこと言ってる柚々子だってやる気満々じゃん。」
「…ばれた?」

必修じゃない、すっごーく緩い講義の最中。
私の周りに広がるクスクスとした笑い声。
っていうのもね、昨日夜更かししちゃって講義中の今、机に突っ伏してお休みしてるネロのノートに落書き中だからなんです。

「えい。」
「あー!せっかく可愛く描けたのに!」
「ふ、ふ〜ん。私がもっとかわいくしてあげたの!」
「お前ら、いい加減にしとかないとマジでネロがキレるぞ。」
「とか何とか云いながらまた描いてるし…。
 大丈夫、その時は柚々子を差し出せばいいんだって。」
「ま、そうだけどな。」
「なんで私!??」

えーっ、だって。…知らない訳じゃないんでしょ?
って顔を友達にされた。
知らない訳じゃないけど、『それはそれ、これはこれ』主義のネロには通じない様な気がするよ。
なんて思うけどやっぱり楽しくってガリガリとノートに落書きを書きなぐってると

「楽しいか?」
「楽しいよ。ねぇ、柚々子?」
「うん、たのしっ…っっつ゛ーーー!」
「後でお前、講義室の後ろにある階段のとこ来い。」
「なんで私だけ!」

頬を思いっきり抓ってきたネロはそれはもうご機嫌斜めの鬼の形相。
とにかくそれからはこれ以上少しでもネロの機嫌を損ねないようにネロのノートを代わりにとってあげることにした!

「綺麗な字で書けよ。」
「分かってるよ!もう!…どうせ私が頑張っても読めないくせに。」
「丸聞こえだ、馬鹿。それともそれについても叱られたいってことか。」
「違いますです!」

うぐぐ。
講義中に寝てたネロにこき使われるなんて悔しい!
でも本当にネロって怒ると怖いから黙っておくことにしとく!

…でもね、その後本当に階段のところまで連れていかれたんだけど…。

「貰っていいの?」
「ノート、とってくれただろ?」
「…。ありがと!」

お菓子貰ったんだ!
たくさんは無いから他の奴らには内緒って講義室に戻ってくネロ。
内緒ってことはここで食べた方がいいのかな?

「うんまいっ。」

とりあえずひとかじりした、最近ネロが買ってるところをよく見てたチョコレート。
一仕事の後の甘いものはとても美味しいよね。

------------------

「ネロ、また柚々子に餌付けしてたんでしょ。」
「…悪いかよ。」
「悪かないけど。
 いい加減告ったらどうだ?なんかあいつのことだし、気付いてないんじゃ。」
「………気付いてる。」
「「は?」」
「気付いてるんだ。…俺が言うまで信用してないだけで。」

なら言ってやればいいと思うのに。
きっと俺はまだ柚々子にとって『一緒にいて楽しい友人』だから…まだ、言えない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ