ようこそ、悪魔の悪魔による悪魔の為の悪魔的なボードゲームの世界へ

□ダイススロー 7回目
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「逢夏〜、もう一枚〜!」
「もう一枚〜じゃないでしょ!?
 少しくらい遠慮しなさいっ!」
「てぇ!」
「まぁまぁ、ディーヴァちゃん。
 遠慮しなくていいって言ったのは私なんだから。」
「逢夏の言うとおりだ、今さら遠慮すんな。
 ディーヴァも好きなもんを好きなだけ食えばいい。
 ピザに飽きたんなら、サラダとかいろいろあるしな。」
「あぅ…。
 そ、それじゃあ…いただきます!」

テーブルの上は既に料理だらけ。
隅に追いやられていたボードゲームは更に場所を奪われ、遂にはテーブルの下へと移動させられてしまう。
したがって和気あいあいと話に食事に花を咲かせる4人は気付かず
カーペットの上に置かれた皿から食事をとるシャティだけは気付いた。

『たノォしそォ!ズルぃ!
 オでもハラへっタ!!!』

カチャン!カチャン!と音を立てて跳ね回る不気味な駒。
シャティは一頻りその駒を見つめ…一番側にいたネロを見上げる。

「ネロ。
 ボードゲームの駒が喧しいのだが。」
「あぁ?ほっとけよ。」
『ホットけ!?ほゥチぷレィい!?
 信ジらエなィ!!
 ォで、怒ッた!!!』
「…怒っているのだが。」
「んなこと言われ「さっきからうっせぇな!駒なんか勝手に怒らせとけばいいんだろ!」
 ダンテ、あんまり言うと次何されるか分かったもんじゃねぇぞ。」

などとダンテを軽く諌めたものの、今は命令外、いつもの世界。
悪魔の力が及ぶのは命令のマスの中だけとネロの表情も明るい。
が、それは非常に甘い考えだった。

『モぅぉソイ!!!』

ピョコンピョコンと跳ねた駒はボードを跳ね出、次にダイスを振るはずの逢夏の元へ。
せっせと上りつめたスリッパの上にダイスを出現させた駒は準備運動なのか堅そうなその体をしならせ始める。

「残念だが、ネロ。
 もう遅いそうだ。」
「…は?」

シャティの実況にネロの間の抜けた返答を合図に駒は大きく跳躍。
その先は膝のくぼみ、詳細には膝蓋腱。
簡単に説明するならば『脚気』の検査で叩かれる部分へと真っ直ぐに飛び…激突。
因みに逢夏は現在多少体調を崩し易いところはあるものの健康体そのものである。
だとすれば…

「きゃっ!?」

検査には合格といったところであろうか。
正しい深部腱反射を見せた逢夏はダイスを蹴りあげる。
当たり前の如く、ダイスはテーブルの天板に当たるとカーペットへと叩きつけられ

…"1"の目で止まった。

『ぃチィのォ目!
 オマぇら、ワなァとゥぁクマだラぁけノ無ジん島デぇ宝サがすゥ!!!』

嬉々と高揚した気分を織り交ぜながらも、多少の怒りがひしひしと感じとれる口調でアナウンスした悪魔。
今回は羊皮紙を吐きだすのも億劫なほどに苛立っているのか、変化は急に現れた。

ぐるぐると回る世界。
床が無くなったと思ったと同時、下へと落ちる体、遠のいていくリビング。
一瞬、シャティがそれぞれの名を呼ぶ声が頭上から聞こえるがそれも直に聞こえなくなってしまう。

「オレのピザーーーー!!!」
「それどころじゃないでしょーーー!!」
「なんで私、ダイス振ったことになってるの?」
「それはその…悪い。
 なんだ…その、俺とダンテの所為だ。」

そんなことを賑やかに各々声にしながら、クルクルと回りながら、黒い世界を落下していく。

すると突如、開ける視界、溢れる光。
その先には

「「「「海ぃ!?」」」」

水とはいえこの速度の落下、痛いでは済まされない。
咄嗟に判断したダンテとネロはそれぞれディーヴァと逢夏を抱き寄せる。

それから数秒後
海面には大きな水柱が二つあがった。
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