白銀の想

□白銀の想 1
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穏やかに降り注ぐ日光が照らすリビングに二人の少年。
一方はその幼さにそぐわないようなカバーをした本と睨み合い、もう一方は外に広がる奇妙な天候に釘付けになっていたが

突然外を眺めていた一人は立ち上がると音を立てて本を読む少年の方に走り寄る。

「なぁ、バージル!一緒に遊ぼうぜ!」

そう言って天気を見るついさっき前まで遊んでいたおもちゃをばら撒き
いい事を思いついたと言わんばかりに無邪気に笑うのはダンテ。
それに対してバージルと呼ばれた少年は少し困ったような顔をして返す。

「遊ぶってなにして遊ぶんだよ。」
「ん〜…とにかく外で遊ぶ!」

はやく!はやく!と目を輝かせながら急かす双子の弟を見たバージルはふるふると大きく首を横に振った。

「だめだよ。今、外は雨降ってるし、それに母さんが家で静かに留守番してなさいっていってたじゃないか。」

大体ダンテは遊んでなくても『静かに』していないから、絶対にダメ
と兄として厳しくを務めるバージルは父から送られた本に集中しようとした…が。

「だったら家の中で探検しようぜ!
 やろうよ、バージルー!本はいつでも読めるだろ!!?」

本を無理やりに取り上げると手を引いて、椅子から無理やり立たせるダンテ
それに対してバージルは苦笑いに似た笑みを浮かべると小さく頷く。

こうなると手がつけられなくなる事を知ってるバージルは仕方なく弟の言う『探検ごっこ』に付き合うことになった。

部屋を散らかしたまま探検を始めようとする弟を見て、また怒られるだろうなぁと思いながらついていく兄。

これが二人のいつもの遊びを始める光景だった。

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トントンとリズムよくまだまだ段差が大きく感じる階段を上りながら

「家の中の探検って言ったって、特にすることないとおもうけど・・・・」

目的地を見定めたようにずんずん進むダンテに手を引かれながら歩くバージルは一人呟く。

そんなバージルに対してダンテは自信満々の声で言い返す。

「あるんだよ!ほらっ、前にバージルも気になってるって言ってただろ?あの部屋!
 父さんにダメって言われてるけど、今お出かけしていないじゃん!」

あの部屋。その言葉は端的にどの部屋のことなのかを表した。
自分たちの部屋の前を通り過ぎ、両親の寝室の前も素通り、その次にある書斎の入り口で立ち止まる。
あの部屋はこの父の書斎の隣で唯一立ち入りを禁じられている場所。

一度、そこは何の部屋なのだとバージルが聞いた際に困った様な声で内緒だと言った後

『絶対に入ってはいけないよ。』

父スパーダの声がいつもの優しさの中に何か怖いものを滲ませていたのを二人は思い出していた。
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