白銀の想

□白銀の想 3
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仰いだのは丁度穴のど真ん中に浮かぶ小さな小さな太陽。
ほんの数分前に別れを告げたはずの日の光はすごく懐かしくて思わず叫びたくなるほどだったが…

「眩しぃっ!」
「馬鹿、直接太陽なんて見たら眩しいに決まってんだろ。」

横のレインは今まで太陽を見たことが無かったらしく、両手で目を抑えながらゆっくりと光になれるように外を見上げていた。

事はその後、光に体を慣らさせ始めて数分経った頃。

「んで、坊や。お前はどう上がるつもりだ?」
「それなんだよなぁ…。」

勢いよく外に出ようと言ったは良いものの、どう帰るか見当もつかない。
本当にこの穴は直角でしかも壁にはどこかに手をかけられそうな場所もない。

一人ならばレッドクイーンと右手を使って無理やりにも上がることはできそうだったが

「ネロ…?」
「…無理だよな。」

行きと違って今は左手を握って放さないレインがいる。
それを悩む俺に対して、目の前では信じたくない光景が

「んなとこでぼーっとしてんなら置いてくぞ。」

真上には赤い陣の上に立つダンテ。
陣は魔力で構成されているものらしく、一歩足を上空に運ぶごとにそれに合わせて新たな足場として現れる。

伊達に半魔をしているわけではないということで魔力の扱いには慣れているダンテはのんびりと上へと登っていく。

口の端に張り付いた笑みはまるで

『お前にはできない芸当だろ?』

と大人げも無く、それに俺はため息をつくしかなかったという訳で。

「どうすっかなぁ…」

本気で困り果てながら呟いた言葉に返答は求めていなかったのに

「跳べば?」

あっさりとしたレインの返答が。
その返答にまさかと期待の眼差しで横の少女を見つめると

「上に行くんだよね?それならこんなの一回ジャンプすれば届くよ!
 …あ、…でも力は使っちゃだめなんだよね?」

どうしようか?
"力を使わない方向で外に出る方法"を考え始めたレイン。
けれど俺は早速だがそれを無視して約束を訂正することにした。

『力を使ってはいけない。ただし力の解放を許可した際を除く。』

とにかくここを早く出たかった。
やはり俺は人間な訳で、悪魔と違いいつまでも暗くジメジメした所は好きじゃない。
だからこそさっさと出たくてこうした訳だったんだけれど…

これが悪かったんだ。

ほんの少し力を解放したことを確認するように数回小さくその場で跳ね、準備が終わったのか手を差し出してくる。

もう一度握り直す様に手を重ねて、ようやくこの薄暗闇とお別れだと無意識に笑みが零れそうになるが
突如レインはぐいっと掴んだ俺の手を引っ張るととある体勢に持っていく。

あー…、こういうのなんて言うんだった?
そうそう、俗に言う"お姫様だっこ"だ。

力を解放したレインには俺の体重など無いに等しいかの如く
上にまいりまーす。と楽しげにアナウンスすると少し足を曲げ跳躍姿勢に入り、一気に跳んだ。


最初は順調に真っ直ぐと…
が、しかしいきなりストレートの軌道が逸れた。
状況を呑み込めなかった俺の思考が追いついたのだ。


「なにすんだよっ!!
 こんなことしなくても、手ぇ引っ張ればいいだけだろ!!」

離せととにかく暴れる。
それに対してレインは淡々としていた。

「だって、このスピードで飛んだらネロの手、腕から外れちゃうかもしれないんだもん。
 力少ししか解放してないから、飛ぶスピードの加減分からないし…もうちょっとで着くから我慢!」

ぎゅっと抵抗も空しいほど強い力で抑えつけられるとそう言い終わった途端、穴の外にでたのか感じた眩しい光につい目を瞑る。

そして瞼を開くといつの間に瓦礫の上に座らせられていた俺を彼女が心配そうに見ていてその後ろでは腹を抱えて笑うダンテがいたという訳だ。
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