白銀の想

□白銀の想 4
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ようやく外が白みはじめた頃だった。
目を覚ましたネロが完全に覚醒してない頭で感じたのははっきりとしないだるさを伴う節々の痛み。

昨夜のことを頭の片隅で思い返すと何故そうなのか何となく合点がいった。

「座ったまま…寝てたのか。」

とりあえずずっとこうして寝ていては余計に体が痛くなる。
それに確実に目を覚ます為にも立ち上がろうと決め、床に落ちた手に力を込めたのだが…

「…?。なんだ?」

そこでようやく左肩にかかる温かな重みを感じた。
肩の方を見ようと首を動かし映った視界にはかけた覚えのない毛布とシーツ、そして何より重みのある左肩には

いつの間にベッドからここに移動したのだろうか、レインがもたれ掛かって眠っていた。

「…なんでこいつ…んー?」

唸りながら記憶を辿るがこうなった経緯は全く分からない。

ただ昼はまだ温かいが朝夜は冷え込むこの季節。
寒さで起きなかったのはきっとこれのおかげだったのだろうとちょっとしたこの気づかいは正直に嬉しかった。

「ありがとな。」

礼の言葉に加えてくしゃっと軽く銀の糸に触れ、頭を撫で
座ったままに首を動かし視界にようやく入りこんだ時計をみるとまだ少々起こすには早い時間。

もたれかかっているレインを片手で支えながら立ち上がるとそのまま毛布にくるむようにして抱き上げベッドに降ろした。


確かに早い時間、しかしいつも通りにキッチンのほうでは何かを焼くような小気味のいい音が響き
起き抜けの霞みがかった感覚を擽る朝食の微かな匂いに無意識に笑みが零れる。

「…もう少ししたら起こすから。」

そういってもう一度頭を撫で、ネロは部屋を出た。

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キッチンに行くにはまずダイニングを通ることになる。
何度も訪れたこの家の構造を知りつくすネロがすたすたと最短を歩いていると
こんな朝には珍しいのではないだろうかという様な顔がダイニングのテーブルの一角にあった。

「おはよ、おっさん。」
「あー、おはよう。」

ぼーっとキッチンのほうを見ていたダンテはぼーっとした声で挨拶を返す。


少し様子のおかしいダンテに疑問を覚えつつ、とりあえず手伝いをとキッチンに急ごうとしたネロだったが

「昨日の夜はどうだった、坊や。」

と突然はっきりしたダンテの声に呼び止められた。

「どうって…なにも無かったけど?」

少し苛立った声になってしまったのは起床したばかりだという事と
妙に鮮明なその声がまるでまだレインを疑う様な、嫌な響きを持っている様に聞こえたからで

そんな疑いを晴らすべくといった口調で返すとダンテは何度も頷き、呼びとめて悪かったと軽く詫びて
ついさっき出たばかりのレインが眠る部屋に向かう。

しかし先ほど思った様にまだほんの少し起こすには早い時間。

「起こすなよ。」
「分かってる。」

答えてひらひらと手を振りつつダンテは部屋に消えていった。

気のない返事にあまり信用できないでいたが、ここでぐずぐずとしているわけにもいかず
当初の目的通り、朝食の手伝いをするべくキッチンへと急いだ。
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