白銀の想
□白銀の想 6
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賑やかだった昼とは対照的に静まる夜。
夜でもいつもはうるさい奴はいるが、今日は悪魔退治の依頼で夕方から出かけている。
久しぶりにようやく寝れそうだ。
とバージルはベッドに横たわっていた。
しかし一向に眠りは訪れない。
瞼の降ろせばその裏に
約束を守るのは私の意志。
そう言い放った時に見せた蒼い目が焼きついて離れないのだ。
力を解放しない"あれ"の力は人間のものに等しい、殺そうと思えばすぐにでも殺せた。
でもそれをしなかったのは…いや、出来なかったのは…あの目に見つめられた瞬間に動けなくなったからだ。
思い出せば、今は妹を擁護する弟に感化されすぎたとしか考えられないあの時の状況に自嘲気味に笑う事しかできず
このまま悩んでいても仕方ないと頭を振り、焼きついた目を振り払うとゆっくりとまた瞼を閉じようとする。
その時だった。
ピシッと硬い何かがひび割れる乾いた音が響く。
バージルはその音に横たえていた体をすばやく起こし、意識を集中させてその音のもとを探り始めた。
常人には聞きとれるはずのない先の音は魔力によって結界などを無理やり破ったときに生じる音に似ている。
となると音を探るのではなく魔力を探るのだが既に干渉した魔力も、干渉された魔力も跡形も無く消えていた。
しかし、そんな訳が無いと更に意識を尖らせて辺りを伺う。
それは、こんな芸当ができる悪魔などいるはずもない所為。
干渉し、されたどちらをも打ち消すには相当の精神力、技量が必要とされる。
しかもあの短時間、上級の悪魔でもできる訳が無い、力があればある程その魔力は押し殺しにくくなる。
「何が起きている…。」
そう考えるバージルは今夜も眠れない。
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朝というには少し遅く、昼というには少し早い時間に目が覚めた。
数日ぶりにベッドで寝ることができて、今までの分熟睡したんだろうなぁ…。
ネロはそんなことをのんびり思いつつ、ついでに昨日のことを思い出していた。
夕方ダンテとトリッシュは急な依頼で出かけていったのだ。
確か、明後日の夜まで帰れないとか…
『レインのこと、頼んだぞ。』
『目を離した隙に何処かに行っちゃった。なんてことがないようにね?』
言い残して出かけた二人の分もレインの面倒を見なければという決意と責任感を新たに階段を下り、
最後の一段を降り切ったそこは人の気配がまったくしないがらんとした事務所スペース。
「レイン…まだ起きてないのか?」
まさか起こすまで起きないなんて体質じゃないよな?とレインの部屋に向かう為に元来た階段を上り直し
部屋の前に着いて、"起きろー。"と一言、ノックととも告げる。
しかし、なんの反応も返ってこなかった。
眠りが深いのだろうかと少しノックする手に力を込めるが物音ひとつしない。
そこで取られる最終手段は一言断りをいれての入室。
ゆっくりだがほぼ一気に扉を開け、ベッドの上をみるとそこにはブランケットに包まるレインの姿が
だがそのブランケットの動きは遠目からも分かる不自然なほどに早い呼吸を示していて
「…レイン?…っ、どうした!?」
力なく握りこまれていた温かなそれを取り去ると熱があるのか顔を赤くして苦しむ姿があった。