白銀の想

□白銀の想 7
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曰く、解放を許された魔力の量では頭の中にある本来の自身の戦い方が出来ないのだという。
と言っても元々戦ったことが無いので今に言った"本来の自身の戦い方"などは憶測の域であるらしいが…

「とりあえず、今回の条件だと当たり前だが精製可能なのはバージルが使う幻影剣程度…。ダメなのか?」
「あれをあまり当てにするな。
 隙を減らす為だけの手段に過ぎん。」
「兄さん達みたいに既存のものを私は持ってないし…だから、なにか貸して欲しいなって。」

なんでもいいけど、もしだめなら他の方法があるかもしれないからと頭を悩ませるレインに救いの声がかかる。

「貸してあげればいいじゃない。
 リベリオンでも閻魔刀でも倉庫の魔具でも。」

気軽に言ったのはもちろんトリッシュ。
その倉庫からなのか多くの魔具を無造作に床に並べて手の埃を払っていた。

「それらはともかく…リベリオンも閻魔刀はダメだよ。兄さん達の大切なものだもの。」

一瞬表情を曇らせた兄達を見てすぐさま辞退するレインはのそのそと魔具を触って様子を確かめ始めると
何か気にくわなかったのか、トリッシュは一度柳眉をつり上げ二人を見、思いついたかのように魔具をレインの手から引っ手繰る。

「?。どうしたの?」
「貴女がこんなのを使うべきじゃないわ、もっと別のにしなさい。」
「もっと、別の?」
「そう。そうねぇ…スパーダとかは?」

意地悪そうな声で放たれた言葉に目を見開いたレインは

「絶対に嫌!」

これに即答。

「じゃあ、フォースエッジにする?」
「さっきと同じこと聞いてるのは分かってるんだよ!」

冗談でも許せないほど嫌なのか珍しくトリッシュに食ってかかり反対するレイン。
それでもトリッシュの笑みは止まないまま

「じゃあ、ルー…」
「〜〜〜っ!。いい加減にしないともうトリッシュとは話さないんだから!」

終いには一方は本気で怒り始め、もう一方はそれでも取り合う気配を見せない。
そんな中、フォースエッジと先ほどトリッシュが言いかけたものが分からないネロはなんでそんなに怒るのか分からずダンテにこっそりと聞いていたりする。

「フォースエッジはイコール、スパーダ。
 トリッシュの使うルーチェ&オンブラはスパーダの手製の品なんだ。」

疑問にぼそっとレインの怒りに触れないように小さな声で返され、何故だか納得のいくようでいかない答えにもう一つ。

「んなこと言ったら、リベリオンも閻魔刀ももとはスパーダのもんだろ。」
「あの二つはもう兄さん達のものだから別!」

ネロも小さな声でダンテに言い返したはずが聞こえていたらしく…
いろいろと彼女の中の基準は理解するのに難しいようだと今度こそ小さくため息をついていた時。
怒りの醒めぬレインにバージルは近寄ると閻魔刀を差し出た。

「え?」
「使え。
 別にお前が気にならないのなら拒む理由は無い。」
「…でも、これ…大切じゃ…。」
「お前がリベリオンのような大剣を振り回すところは見たくない。
 それに…。」

恐る恐る伸ばされた細い指先に押し付ける様に閻魔刀を預け、話を続ける。

「何より大事なのはお前だ。それでそのお前が守られるのであれば俺としては本望。…そうだろう?」

優しく撫でられ、言われたことが嬉しかったのか目を輝かせるレインは大きく頷いて閻魔刀をしっかりと握ると

「ありがとう!」

ぎゅっとバージルに抱きついた。
…の瞬間、ダンテに対して何らかの優越感を滲ませる顔を向けるバージルをレインは知らない。
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