日記

雑談.最近の出来事が主な事
◆連載になりそうでならなかったもの(ゆうはく) 


「お願いでありんすから、好きって言ってくんなまし 」

涙は赤く光るルビーに変わった。
日ノ出、俺は昔から君が好きだよ、でも君が好きなのは南野秀一じゃなくて妖狐・蔵馬だろ?

「蔵馬ぁ…」

とろけるような甘い声、その声が俺に向けてじゃないことに吐き気を覚えてしまう。
蔵馬じゃない、俺は

「南野秀一ですよ」

だから君の思いには応えられない。
でできそうになった涙を押し殺し君に言う俺はあまりに滑稽な顔をしていたと思う。君が好きだ、もう何年も前になる、始めて君を見た時の痺れがまだ指先に残っている、引き裂かれそうだ君が俺の中の蔵馬を呼ぶたびどうしようもない破壊衝動に駆け巡られる。

「みなみの、しゅういち」

流れる涙が大粒になり彼女は顔を隠し一度声をあげた、着物の袖は落ちてく石にうもれては色を濃く変えていく。
ああ、君はやっぱり悲しみの涙を流すんですね、見られていないのをいいことに俺も目をつむり大きく息を吐いて熱くなる目尻の熱を吐き出す。それと一緒に飛び出そうとする好きの二文字。

「やっと、聞けたぇ、ぬしの、ぬしの口から、ぬしの言葉でぬしの名前を」

わけがわからない、冷や水を浴びせられたように冷えて行く身体、今更なにをいうんだ、知っているだろ俺の名前なんて、だって、だって、

「、何言ってるんです、俺の名前は前から「知っていた、知っていんした 。けれど、ぬしの口からぬしの名前を聞くまで絶対に口にしない 、そう決めていたから」決めていた…?なぜ?」

一層深くなった眉間のしわは言葉とともに薄れてゆき、最後には柔らかく微笑んだ。その拍子に目に溜まった涙がころりと落ちた。
微笑んだ彼女に苛立った心がきゅうっと落ち着いて行くのがわかった。やっぱり好きなんだ、

「蔵馬は妾に愛してると言った、けれど南野秀一は?ぬしは、いちどだって妾を愛してるなど言ったことはなかったぇ…わかっていた秀一、ぬしと蔵馬は二心同体といわすことを、それでも縋りつき喚いたのは妾の弱さ、今年の今日ぬしに愛されなければ、人間界を発ち魔界へと逃げ帰るきでありんした」

一つ二つとまた涙をこぼし次は声を荒げないた。
俺が追い詰めた君はいつも気丈に振る舞い美しい笑みをみせていた、悩んでいる俺を君は見下すように笑った。その仮面の裏の君は、とても儚く脆いただの美しい娘だった。
卑怯だ、泣いてる彼女が反論できるわけないのに、その震える肩を抱きしめ愛してると耳元で囁いた。

「くるし、くて!なんどもなんどもぬしを、きらお、と、したのにっ!!!っ、なんで、くるし、い、すき、いきが、できなくて、くるして、ぬしが、ぬしらがすきで、」

「日ノ出」

「もう、っしあわせ、なって、いいの、?」

「日ノ出、愛してる」

「わらわも、妾も、もうずっと前からぬしをお慕いしておりんす」

涙のあとが残る顔はそれでも美しさを残し笑った、笑顔。
視線が絡まりどちらともなくしたキスは禁断の果実のような甘美な味がした。

アンバランスなKissをして
(君の心が僕を呼ぶまで)
(抱きしめあえる日まで)

2013/01/28(Mon) 22:09

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