Long

□REN 04
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「なんだー、三橋懐かしくて泣いてたんかー」


昼休みどこかに出掛けようとする三橋を捕まえ事の顛末を聞いた浜田は
胸を撫で下ろしホッとため息をついた


『ごめんなさい』
オドオドと目線をあちこちに飛ばしながら三橋が俯く


「いや、違う違う!
おれなんかしちゃったのかなって勝手に思っただけだし
三橋が昔の事覚えててくれたの嬉しいよ」

また泣いてしまわないか少しドキドキしながら浜田が言った

(三橋ってこんなに暗い子だったっけ?)

昔はすぐ泣くけどいつも笑ってる明るい子だったよなあ

―ハマちゃん!



三橋の頭に手をかざすと一瞬肩がビクッとしたが
ポンポンと三橋の頭を撫でると
目を大きくして見上げてきた

「オレも懐かしいよ―」

三橋の大きな目が輝いて笑顔になった



(三橋、髪の毛やらかいなあ―)

「―! ご、ごめん昔の癖でつい」

顔を真っ赤にして浜田が謝った


「セクハラー」

「ケダモノー」


この声は一番見られて欲しくない二人組…


後ろから声がしてきて浜田が振り向くと
案の定野球少年二人組がこちらを見て笑っている

いや、目は笑っていない…

「えっと、その、違うって!二人とも顔コワイから!」

三橋は訳が分からずキョトンとしていた




「へー三橋って音楽科にいたんだー」

『うん』

「何やってたの?」
浜田が購買で買ってきたメロンパンを頬張り聞いた

『ピアノだよ』

「スゲー、ピアニストだー」
田島が目をキラキラさせて言った

「じゃあなんでうちのガッコ来たの?音楽科あるとこじゃなくて」
泉はもう弁当を食べ終わってパックのジュースを飲んでいた

『もう弾けないから』

6つの目玉が三橋に集まる
「え?なんで?」
田島が聞くと三橋はしばらくどことなく見つめた後、少し考え込んでスケッチブックにボールペンの染みを作った

「三橋のピアノ聞きたかったなー」
田島がそう言うと三橋は困ったように笑った

『もうそろそろ行かないと次の授業遅れちゃうね』

「あ、やべえ!次移動じゃん!」
泉がそう言って周りをみまわすとクラスメイトは一人も残っていなかった


 
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