My treasure

□愛姉弁当
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朝、登校前の栄口家。




「勇人!ちゃんと感想メールしてね
!」

「わかったよ」

「マズかったらマズイってちゃんと
言ってね!」

「わかったってば。行って来まーす





・・・・・・・・・・・・




今日も長くかったるい授業が終わり
、待ちに待った昼休み。
学食に向かう者や机をくっつけて教
室の一角を陣取る者。
育ち盛りの胃袋を満たすべく、思い
思いの昼食タイムを取る生徒達。

1年1組野球部二遊間コンビ、栄口
と巣山も例に漏れず、いつも通り机
をくっつけて弁当箱を取り出す。

ただ、いつもと違ったのは


「今日の栄口の弁当箱…やたらファ
ンシーに見えるのは気のせい?」


栄口の弁当箱を包む袋に某有名キャ
ラクター達が散りばめられているの
は、まぁ良しとしよう。
無駄に似合うし。
だが、それにつけても高校男児がピ
ンクの弁当箱とはどうだろうか。

巣山の質問に、あー…と唸ってから
栄口は事の顛末を説明する。


「姉貴がさ、最近彼氏出来たらしく
て。そんで弁当作ってやるんだって
無駄に張り切っちゃってさ…そいで
オレが実験台に」

「…なるほど」


あまり目に優しくない袋や弁当箱は
、栄口姉の気合いの表れな訳だ。

それにしても。


「男を想うのなら弁当箱は普通にし
て欲しいよな…」


巣山が漏らした一言に激しく同意す
る栄口。
男には男の事情があるのだ。
面目も多少なり気にして頂きたい。


「姉貴の事だから味の心配はしてな
いんだけどね…」


そう言ってパカっと蓋を開け、中身
を目にした栄口は黙ってもう一度蓋
を閉めた。
そして額を押さえる。


「どしたよ」

「巣山…この中身の率直な感想を述
べよ」


スッ、とピンクの弁当箱を巣山に差
し出す栄口。
何かと思い、巣山は蓋を開ける。

そこには、でかでかとハートで飾ら
れた『LOVE』の文字。


「うおおぅ……」

「ダイレクト過ぎるよな…」


今時こんなん作る人居るんだ、と巣
山の脳裏には失礼な感想がよぎった

しかし、人の姉に対してそんな失礼
な事言えない。


「やー…でも、好きな子から貰うん
だったら嬉しいと思うぞ」

「…模範解答をありがとう」




あ、バレてる。




「味がどうこう以前の問題だよコレ
は…」


はぁ、と溜息を吐いて携帯を取り出
した栄口。
姉に感想を送るのだろうか。


「何て送んの?」

「『フラれたくなかったら普通の弁
当にした方がいいと思うよ』」


やんわりとした伝え方の様に聞こえ
るが、内容はだいぶドギツイ。
まぁ、彼氏さんの面目を潰さない為
にはこの弁当はやめた方がいいのは
確かだ。


「学校で食う身にもなって欲しいよ
…」


もう一度はぁ、と溜息をついて箸を
取り出した所で、背後にただならぬ
気配。




「栄口ー!!何その弁当ー!!」




田島だ。
よりによって今日。


「栄口カノジョ出来たのか!?アイ
サイ弁当だ!!」

「違う違う違う!!」


ゲラゲラとでかい声で勝手に話を進
める田島を、更に大声で制止する。

その時クラス中の注目を浴びたのは
言うまでも無い。


「これはね、姉貴が作ったやつでね
、」

「へー、栄口のねーちゃんてそーゆ
ーシュミなの?」


控え目の声で田島に何とか説明しよ
うとするが、人の話を最後まで聞か
ず、栄口姉の人物像を勝手に描いた
田島はふーん、と興味なさそうに相
槌を打った。


(こいつ〜…)


栄口は頬を引き攣らせ、巣山は苦笑
いをして、田島に用件を聞く。


「で、何の用?」

「そーだ!古典のノート貸して!今
日午後イチなんだ!」


パンっ、と両手を合わせ、お願いっ
と頼み込む田島。

今月に入って何回目だ、と思ったが
、今日に限っては一刻も早くここか
ら立ち去って欲しかったので、栄口
は大人しくノートを差し出した。


「サンキュー!あとで返すからー!
!」


小さな台風はそう言い残して廊下を
走り去って行った。
ふう、と一安心した栄口はようやく
弁当にありつく。

だが、巣山は一抹の不安を拭い切れ
なかった。
敢えてその事は栄口に告げずに過ご
した昼休み。

そして、その日の部活前。




「栄口ん家って愛姉弁当なの?」




案の定、田島によってあられもない
噂が広められていた。




end



*****************

過去に天然プラネタリウム桐島様に
1234hitのリクエストで1組の昼休み
をお願いしたらばこんな素敵なものを
書いてくださいました!

お姉ちゃんのズレた感じが可愛い!

栄口家は可愛いですなあ//

私の家宝でございます!!

キリリク初めて書いてもらったものだから
嬉しくてしょうがなくて
とても大切な作品です。

桐島様ありがとうございました!


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